目次

はじめに
職人芸では終わらせない
本書で伝えたいこと
表記関係について
免責
第1章Power Automateのおさらい
1.1Power Automateとは
1.2Power AutomateとPower Automate Desktop
1.3必要なライセンス
1.4初めてのフロー作成
1.5トリガーとアクション
1.6コネクタ
1.7フローデザイナーを使いこなす
1.8デバッグ時に役立つ機能
1.9より高度な機能
1.10まとめ
第2章Power Automateによるローコード開発の心得
2.1ローコード開発とフツーの開発の違い
2.2Power Automateの特徴
2.3Power Automateが適していること
2.4いきなり難しいことに挑戦しない
2.5わかりやすい名前を付ける
2.6フローを小さく保つ
2.7フローを読みやすく保つ
2.8ループを避ける
2.9多数のアクションをまとめて移動する
2.10フローの所有者を複数ユーザーにする
2.11Excelを避ける
2.12フローに使うパラメーターを分離する
2.13まとめ
第3章「通知する」フローの制作
3.1通知フローの目的を決める
3.2通知フローの仕様を決める
3.3通知フロー用のアイテムリストを定義する
3.4通知フローを編集する
3.5まとめ
付録A入力支援ダイアログ
A.1入力支援ダイアログ(新版)の使い方
A.2入力支援ダイアログ(旧版)の使い方

はじめに

 ここ数年、IT業界に限らずあらゆる業界・業態において、IT化やDX化の波、リモートワークニーズの高まりなどが混然一体となって押し寄せてきています。企業におけるITインフラ投資が進んだことで、私たちの業務を取り巻く環境は大きな変革期を迎えていて、メール、オフィススイート、クラウドストレージ、チャットといったツールは、自社の情報システム部門がそれぞれ個別に選定し調達するものではなくなってきました。代わりに、グループウェアパッケージとして導入する選択が注目され始めています。Microsoft 365(あるいはOffice 365)は、企業のスケールを問わず導入が可能なITインフラサービスのひとつとしてシェアを伸ばしています1

 Microsoft 365サービスの一部としても利用できるPower Platformは、DX化やデータドリブンな運営のためのキーテクノロジー群として、大変注目を集めています。なかでもPower Automateは、組織が扱っているデータを整理して組織のメンバーが利用可能にするデータの民主化と、組織ごとのニーズに特化したソリューションの構築をIT専任エンジニアに頼らずに実現する、開発の民主化のふたつを達成する手段として期待されています。

 そのようなニーズを反映してか、最近は関連書籍も多数出版されています。それらの多くではローコード開発のメリットとして、次のような点が挙げられています。

 ・プログラミングをほとんど行わないので、ノンプログラマーでも開発できます(そう、あなたも!)

 ・開発をほとんど行わないので、短時間で導入できます(そう、明日から!)

 このような謳い文句に溢れています。ソフトウェアエンジニアである筆者もこのような点に同意できる部分を感じつつも、プログラミングや開発の重要さを欠いた民主化にはリスクがあると危惧せずにはいられません。

職人芸では終わらせない

 あなたの会社には、Excel職人という非公式な肩書きを持つ方がいませんか?

 大抵の組織にはデータの番人ともいうべき担当者が、月末や月初の締切日にExcelのVBAスクリプトを実行したりしていて、最終の集計データなんかをファイルに出力したりしていることでしょう。そのようなVBAスクリプトにはどこにどういうデータを配備し、どこにどういうデータを出力するのかがそれぞれ決められていて、複数のファイルをまたがって情報を参照することもあります。が、そのスクリプト実行中に発生したエラーを理解して修正できる人というのはどうしても限られてしまうのが常です。そのような職人が異動したり退職したりすることで、そのExcelファイルはたやすく技術的負債となってしまうのです。

 実はPower Automateにも、同様のリスクが潜んでいます。この先、数年以内にAutomate職人が世の中に登場し始め、それで収入を得ることも可能になっていくでしょう。そうして作られたほとんどのPower Automateフローも、いずれは陳腐化して、技術的負債と化してしまうものと筆者は考えています。

本書で伝えたいこと

 本書は、Power PlatformファミリーのひとつであるPower Automateにフォーカスします。社会人として、Power Automateやローコード開発とうまく付き合うための作法や心得について解説します。

 読者としては、次のような方を想定しています。

 ・初歩的なExcel関数を理解している方(SUM()、IF()など)

 ・Web関連用語を少し理解している方(Webサーバー、Web API、JSONなど)

 ・とにかくPower Platformを触って、何か作ってみたい方

 本書を通じて、次のような知識が身に付くと考えています。

 ・基本的なPower Automateの触り方、作り方

 ・陳腐化しづらい、技術的負債の少ないフローの作り方

 第1章では、Power Automateのセットアップ手順やフローの作成手順について簡単に振り返ります。フローを構成する要素や、よく使う設定について解説します。読者はPower Automateに関連する用語について学び、このツールが何であるかを知ることができます。

 第2章では、ローコード開発におけるコツを中心に解説します。読者はこのPower Automateというツールをどう使うか、どのようにフローを組み立てるかを俯瞰することができます。

 第3章では「通知する」をテーマとして、よく使うコネクタやテクニックについて解説します。読者は具体的なフローの実装を確認しながら、これまでに触れてきたコツがどこでどのように活用されているかを復習することができます。

表記関係について

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免責

 本書の内容は執筆時点のものです。Microsoft Power AutomateとMicrosoft Power Platformはクラウドサービスであり、本書の内容は随時変更される場合があります。また環境によっては、本書の手順どおりとならない場合があります。

 本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって本書を用いた運用は、読者自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報の運用の結果について、発行元および筆者はいかなる責任も負いません。

1. 出典: https://boxil.jp/mag/a7630/

試し読みはここまでです。
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