Salome-Mecaは、構造解析を実行できるオープンソースのGUIです。Salome-MecaはCADモデリングとメッシュ生成機能など、プリプロセスを搭載するGUIであるSalomeと、フランスのeDFが開発し公開しているCode_Asterというソルバーを組み合わせてできています。Code_Asterは応力解析、固有値解析、周波数応答解析、非線形材料や熱解析など、幅広い分野の計算を実行できます。
本書は、Salome-Mecaの解析手順について説明します。Salome-Mecaは、古くはEficasというGUIで入力項目を追加しながらインプットを作る手順となっていました。これは非常に煩雑で、商用のソフトウェアと比べて使い勝手が悪く、入門者の障壁になっていました。バージョン2017からインプットの入力は、AsterStudyというモジュールに変わりました。これはSalome-Mecaの画面上でインプットを入力できるもので、見かけは商用の解析ソフトウェアに見えますが、入力する項目についてはガイドがなく、インプットデータの構成を知っているユーザーだけが使える状態でした。そんなAsterStudyも現在では、解析分野ごとにインプットのひな形が作成できるAssistant機能が追加され、使い勝手が向上しています。
本書ではSalome-Mecaのバージョン2021を対象に、AsterStudyに搭載されている解析のひな形を作る機能を使った計算インプットの準備の仕方について説明します。
第1章はSalome-Mecaについての説明と、プログラムのインストール方法について述べます。Salome-MecaはLinuxで動作するソフトウェアですが、本書ではWindowsでの実行を目的に開発されているWindows版を対象に説明します。
第2章は、基本的な応力解析の実行方法を示します。材料は線形とし、問題は静的な現象を取り扱います。
第3章は、簡単な熱伝導解析の手順について示します。
第4章で熱応力解析について述べます。熱解析を実施し、そのあとに応力解析を行います。
第5章では固有値解析について示します。固有値は手計算の結果と比較します。
第6章はモード法を使用した周波数応答解析の手順を説明します。周波数応答解析はAssistant機能がないため、モーダル解析のインプットを修正してモデルを作ります。
第7章は第6章と同じ問題に対して、直接法による周波数応答解析の手順を説明します。計算では減衰を追加する方法も示します。
付録に参考文献を列挙しています。本書の内容以外にSalome-Mecaを勉強する場合に、参考となる資料を挙げています。
各章の例題、条件設定は非常に簡単なものですが、これからSalome-Mecaに触れる方、かつてSalome-Mecaを使用していてあきらめてしまった方にSalome-Mecaに改めて触れていただける内容となっていれば幸いです。
本書では、次のような人を対象としています。
・Salome-Mecaに興味がある人
・Salome-Mecaを使用し始めたが、インプットをどう作成したらいいかわからない方
・かつてSalome-Mecaを使用していたが、インプット構築が難解すぎてあきらめた方
本書は、Windows11で実行確認しています。
本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。本書の内容による開発、計算の結果について、筆者はいかなる責任も負いません。
オープンCAEの世界に引き込んでくださった、オープンCAE勉強会@関西の初代幹事である冨原大介氏、2代目幹事として一緒に運営をいただいている片山達也氏に、厚く御礼申し上げます。また、普段より活発に情報交換をさせていただいているJun_Tatsuno氏、HSakai氏、RDeguchi氏およびオープンCAE勉強会の関係者の皆様に御礼申し上げます。最後に、勉強会等の活動を見守ってくれている家族に深く感謝いたします。
本書籍は、技術系同人誌即売会「技術書典13」にて配布した同人誌「Salome-Mecaの足あと お試し版」(サークル名:はんままにあ)を底本に、加筆・修正を加えています。
本章ではSalome-Mecaのインストール方法について説明します。本書ではWindowsを対象に環境構築の方法を説明しますが、Linuxでは公式ページからコンテナプラットフォームのSingularityに対応したコンテナイメージがダウンロードできるので、そちらを使って環境構築ができます。
・Salome-Meca公式ダウンロードページ https://code-aster.org/V2/spip.php?article303
Salome-MecaはLinux向けに構築されているGUIになりますが、Windows環境で動くものを開発している方々がいます。Windows版は次のページで公開されています。
・https://code-aster-windows.com
ソフトウェアのダウンロードは「Download」ページからできます。
Salome-Mecaの計算には、ふたつのソフトウェアのインストールが必要です。
ひとつはSalome-Meca本体、もうひとつは計算を担当するCode_Asterというソルバーになります。
まず、Salome-Mecaをダウンロードします。ダウンロードは「Download Salome-Meca 2021 w64」を選択してください。
しばらくすると「SM-2021-w64-0.5.zip」がダウンロードできます。ダウンロードしたzipファイルを任意の場所に解凍します。本書ではドキュメントフォルダーに解凍しました。
次に、ソルバーのCode_Asterをインストールします。まず、ダウンロードページから「Download Code_Aster 2021 msi」をクリックします。
しばらくすると「code-aster_v2021_std.msi」がダウンロードできます。ダウンロードしたcode-aster_v2021_std.msiを実行します。実行するとインストーラーが立ち上がります。
Nextをクリックします。次にEnd-User License Agreementの画面が出ますので、I accept~にチェックを入れてNextをクリックします。
次にインストール場所を聞かれるので、そのままNextをクリックします。
最後にインストールするか確認する画面になりますので、Installをクリックします。
インストール状況を示す画面が表示されますので、しばらく待ちます。
インストールが終わると、それを示す画面が表示されます。Finishをクリックして終了します。
解凍したSM-2021-w64-0.5フォルダーにあるrun_salome.batをクリックします。
しばらくすると、Salome-Mecaが起動します。これでインストールは終了です。