まえがき
第1章 世界を席巻するアマゾンのAWS
第2章 クラウドを構成する技術要素
第3章 フォーキャスティング・AWS
第4章 AWSを活用するためのマインドと方法論
第5章 ゼロから学ぶAWSの学習ガイド
第6章 AWSのことを好きになろう
付録A AWS認定資格保有者による資格対策トーク
付録B 現場のクラウドエンジニアに聞くマルチクラウドの最前線
あとがき
アマゾンが提供するクラウドサービスのAmazon Web Services(AWS)は、2006年の登場以降、目まぐるしく移り変わる世の中の変化に柔軟かつ迅速に適応するために、多くのITエンジニアや企業に利用されてきました。現在では世界中の大企業やスタートアップ企業、公的機関など、私たちのビジネスや生活に関わるありとあらゆる所でAWSが使われています。そして、新しくAWSの利用を始める企業やAWS関連の仕事に関わる人は今後も一層増え続けていくことでしょう。
このような状況の中で、本書では「AWSに興味はあるけれど、AWSがなんなのかよく分からない」「ビジネスを成功させたいけれど、AWSやクラウドのことがよく分かっていない」という悩みを解決するために、AWSはもちろん、AWSの提供を行うアマゾンの企業文化や経営スタイルについて学ぶことで、個人やビジネスの成長を加速させることを目指しています。
本書は、IT業界での経験が浅いIT初学者の方を初めとして、ビジネスサイドを意識しているエンジニア、プリセールス、マーケター、経営者、管理者など「クラウドを活用してビジネスを成功させたい」と考えているすべての方々を対象としています。タイトルにある「クラウドジャーニー」とは、一般的に企業がクラウドを活用してビジネスを成功させるための取り組みを旅路(ジャーニー)に例えた言葉です。しかし、本書では「企業にとっての変革」だけでなく「ひとりひとりの個人がクラウドへの理解を深めて必要なスキルを身につけていく過程」の意味を込めてこのタイトルを付けました。
クラウドジャーニーの最初の一歩を踏み出すために、本書ではAWSについての基本的な知識やクラウドを構成する技術要素はもちろん、AWSが誕生してから今日に至るまでの変遷やAWSを最大限効果的に活用するために必要なマインドなど、AWSにまつわるストーリーを様々な角度から紹介しています。その一方で、既に書籍やインターネット上に多くの情報が存在する、各AWSサービスについての詳しい説明や、AWSを利用して設計・開発・運用を行うための具体的な実践方法などには触れていません。
AWSを活用できるようになるための旅路は長く、その道のりは決して平坦なものではありませんが、AWSのことを好きな気持ちさえあれば、AWSを学ぶ過程にどのような困難があっても必ずそれを乗り越えていけるはずです。
筆者はこれまで、AWSの提供する革新的なサービスの数々に「AWSってすごい!」という感動を幾度となく覚えてきましたが、そういったテクノロジーと同等かそれ以上に、AWSを提供するアマゾンの考え方や行動指針にインスパイアされてきました。本書をお読みになるみなさんがAWSのことを好きになるとともに、この本が、どこまでも広がり、雲のように日々姿を変えるクラウドの世界へと羽ばたく最初の一歩になることを強く願っています。
・本書は同人誌即売会「技術書展8」にて頒布した同人誌「恋するAWS入門 〜AWSの過去・現在・未来が1冊で分かる本〜」を底本に、加筆修正する形で作成しています。
・本書の記述は筆者の見解に基づくものであり、Amazon Web Services, Inc. およびその関連会社、筆者の所属する組織等の公式見解を示すものではありません。
・本書に掲載されている情報は、筆者および出版社が正確性・完全性その他いかなる保障を与えるものではありません。利用者が本書に掲載されている情報を利用して行う一切の行為について、著者および出版社はいかなる責任も負いません。
・本書に記載のある会社名および製品名は各社の商標および登録名です。
企業の価値を示す指標のひとつに、会社の株価と株式数から算出する時価総額というものがあります。アマゾンは2019年1月に7968億ドル(約86兆6000億円)を記録して、初の時価総額世界1位を記録しました(1)。企業の時価総額ランキングは日々変動しているものの、その上位を占めているのはGoogle、Apple、Facebook、Amazon、MicrosoftといったGAFAないしGAFAMと呼ばれるアメリカのIT企業です。世界規模でIT業界を席巻するこれらの巨大企業は日本国内でも大きな注目を集めていますが、アマゾンがこれほどまでの地位を築いている背景には、インターネットショッピングでの成功に加えてAmazon Web Services(AWS)の存在が大きく影響しています。本章では、ショッピングサイトの運営だけではない、テクノロジーカンパニーとしてのアマゾンの姿に迫ると共に、クラウド市場を席巻するAWSのアイデンティティに迫ります。
インターネットショッピングサイトAmazon.comのサイドビジネス的な存在として静かにスタートしたAWSは、サービスがリリースされてからわずか数年でAmazon.comを遥かに上回る成長を遂げ、年間100億ドル(1兆円)超の売上をあげる驚異的なビジネスへ変貌しました。
現在、AWSは低コストで信頼性と拡張性の高いITプラットフォームとして、190カ国以上の数十万にものぼるビジネスを支援しています。まさにありとあらゆる業界のニーズに応えているAWSについて、まずはAWSとは何なのか、何がそんなに革新的なのかということを見ていきましょう。
アマゾンは1995年にオンライン書店としてサービスを開始し、その後に様々な商品を取り扱うネットショッピングサイトとして短期間で急激に規模を拡大していきました。そして、その急速な成長の実現のためにウェブサイトを迅速に開発し運用していくための問題を解決する方法として生まれたのがAWSです。
それではここでひとつ質問をしてみましょう。Amazon.comのようなショッピングサイトを運営するためには、どのようなシステムが必要でしょうか?
ブラウザを利用してAmazon.comのウェブサイトに接続できるようにするためには、ウェブページをユーザーに提供するためのサーバーが必要です。他にも、ユーザーの選択に合わせて画面の表示を変更するアプリケーションサーバーや、たくさんある商品情報とユーザーひとりひとりの顧客情報を管理するためのデータベース、画像データを保存するためのストレージも用意しなければいけません。そして、こうしたサーバーやストレージなどを準備・運用するためには、専用のサーバールームやさらに規模の大きいデータセンターを用意する必要があります。
しかも、アマゾンのショッピングサイトは、プライムデーやサイバーマンデーといった大規模なセールによる大量のユーザーアクセスが発生したり、24時間世界中のどこの国からでもユーザーが商品を購入できるという世界でもトップクラスの需要に応え続けています。
このようにアマゾンを支えるサーバーやデータベース、ストレージとったアマゾンが利用するのと同じ水準のITリソースを、誰でも利用できるように提供するサービスがAWSです。
AWSは、Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービシズ)と最後の「Services」が複数形になっているように、Webで利用可能な数多くのテクノロジーを総称した名称です。AWSとは何かについて、具体的には2章で説明を行ないますが、その前にAWSのすごさを一言で説明するのであれば、それは「ITリソースを、所有するものから利用するものに変えたこと」です。
アマゾンのようなショッピングサイトに限らず、オンライン会議サービスや動画配信サービスなどインターネットを通じて利用することのできるウェブサービスやアプリケーションを開発する場合には、サーバーやデータベース、ストレージといったITリソースを用意しなければいけません。そして、このようなITリソースを自力で調達する場合、利用する機器の選定や機器を購入した後の構築・設定、サービス提供に伴う運用・メンテナンス作業をすべて自分たちで行う必要がありました。
それが、AWSが登場したことによって、ITリソースの調達から運用に関わる手間のかかる作業を行わなくても、インターネットを通じてアマゾンが用意した様々なITリソースを誰でも自由に利用することができるようになったのです。
これは今までのITの歴史の中でも最も大きなパラダイムシフト(価値観の転換)のひとつであり、ビジネスにおける従来のルールが新たなものに変わるゲームチェンジとなった、極めてインパクトの大きいできごとです。
アップルがiPhoneを発明したことでスマートフォンの時代を確固たるものにした企業であるならば、アマゾンはクラウドの時代を切り開いた企業であり、スマートフォンが消費者の行動をすっかり変えてしまったのと同じように、クラウドは企業のテクノロジーの利用の仕方を根本から変えてしまいました。2006年にAWSが初めて登場してから2021年までの15年間にAWSは企業の活動に大きな変化をもたらしていますが、AWSが秘める潜在的な可能性はまだまだ底が知れず、その真価が発揮されるのはこれからのようにも感じられます。
前のパートでは、AWSは数多くの企業によって利用されているとお伝えしましたが、実際にAWSはどのような形で利用されているのでしょうか。これまでの説明を読んだ中で、もしかしたらAWSに関係があるのはIT企業だけだと思っているかもしれませんがそんなことはありません。 サービスやアプリケーションの開発を行うIT企業だけでなく、消費者向けのサービスを運営・提供するユーザー企業、そしてそのサービスを利用する一般ユーザーなど数多くの人たちが気づかないうちにAWSの恩恵を受けています。それではここからのパートでは、実際にAWSが利用されている具体的な事例について確認していきましょう。
AWSを利用するユーザーは2020年の時点で190ヶ国で100万以上にものぼります。
国内の分かりやすい事例として、任天堂のケースを見てみましょう。任天堂では2016年に「片手で遊ぶ新しいマリオ」というコンセプトの元に、スマートフォンなどのスマートデバイスでプレイできる「Super Mario Run(スーパーマリオラン)」の配信を開始しました(2)。
Super Mario Runは151の国と地域に配信されると、配信開始からわずか4日間で全世界4,000万ダウンロードを突破しています。配信の開始を待ちわびていた世界中のマリオファンに対して同時にリリースを行うことができた背景にはAWSの存在がありました。
Super Mario Runは、配信のために必要なITインフラ環境の仕様が確定したのがゲーム公開の約2カ月前だったにも関わらず、各国の法律や規制に対応したセキュアなインフラの短期間での構築と、世界中のユーザーに対する安定したサービス提供を実現しています。これにはAWSが大きく貢献しています。
もうひとつ、日本国内での事例を見てみましょう。フジテレビは、数万人が視聴できる映像配信環境をAWSを利用して約3週間で構築しました(3)。フジテレビでは2019年9月から10月にかけて生中継を行なった「FIVB ワールドカップバレーボール 2019」において、日本代表戦の同時配信や見逃し配信を含む全試合のフルマッチ配信の他、地上波放送とは別アングルの映像をスマートフォンなどで楽しむことができるセカンドスクリーン企画を実施しています。この企画では、通常のネット配信ではライブ放送から30秒程度の遅れが出るのが一般的なところを、3秒以下の超低遅延配信を実現する特殊な配信技術をAWSと組み合わせて利用することで、数万人が同時に視聴できる超低遅延配信環境の構築を実現しました。
任天堂やフジテレビの他にも、ANAでの業務データ分析や資生堂のキャンペーンサイトの基盤、すかいらーくでのレシート明細分析など、AWSは大小さまざまな企業で利用されていて、これらの導入事例についてはAWSのホームページ上に数多く紹介されています。
・日本国内のお客様の導入事例
─ https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies-jp/
また、日本国内から海外にも目を向けていくつか事例を見てみましょう。まず最初にご紹介するのは定額動画配信サービスのNetflix(ネットフリックス)でのAWS利用事例です。巨大IT企業を指す言葉には、GAFAの他にもFacebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleの頭文字をとったFAANGと呼ばれるものがありますが、Netflixはそのひとつに数えられている巨大企業です。
定額動画配信サービスと言えば、日本国内ではAmazonプライムビデオやHulu(フールー)なども人気がありますが、Netflixは毎日190か国の2億人を超える利用者へ膨大な映像コンテンツを提供しています。そして、Netflixでは世界中のユーザーの利用に24時間365日応えるために、600個ものサーバー群をAWSのクラウド上に用意しており、そのひとつひとつのサーバー群には1000個ものサーバーがあるといいます(4)(5)。
また、世界中に2億人以上のプレイヤーが存在し、ピーク時には800万人以上が同時にプレイするオンラインバトルロイヤルゲームFORTNITE(フォートナイト)でもAWSが利用されています。FORTNITEは、世界中の数百万のプレイヤーがゲームをプレイする際に発生するコマンドやステータスを同時かつ高品質に管理するためにAWSを利用していて、1秒あたり数万〜数十万件以上(1分あたり1億2500万以上)にものぼるイベントを、ミリ秒単位の速さで高速に処理しています(6)(7)。
他のケースとしては、世界最古の大学であるイギリスのオックスフォード大学の図書館がAWSを利用して蔵書をオンライン上に移行した他(8)、各国の政府機関でもAWSは利用されています。例えばオーストラリアでは、国税局や統計局の業務システムがAWS上で稼働していますが、教育・研究機関や行政機関、政府機関といった世界中のありとあらゆる組織でAWSが利用されています。
AWSのグローバルなユースケースについて詳細はAWSのホームページなどで公開されていますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。AWSが業界や規模を問わずに様々な場面で利用されていることが分かるはずです。
・すべてのAWSクラウド導入事例
─ https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/all/
AWSが利用されている事例をいくつかご紹介しましたが、直接的に意識することはなくても、AWSは普段の生活のとても身近なところで利用されています。このことがよく分かるエピソードとして、アメリカのインターネットメディアのGizmodo(ギズモード)の記者であるカシミア・ヒルさんが行なった「1週間アマゾン無し生活」のチャレンジがとても面白いものだったので、その内容をご紹介します(9)。
彼女のアマゾン無し生活とは、単純に「アマゾンを使って買い物をしない」というものではなく、彼女の持っているすべてのデバイスに対して特殊な設定を行うことで「AWSを利用しているサービスとの通信を完全に遮断する」という徹底したものでした。果たして、彼女のチャレンジの結果はどのようなものだったのでしょうか?
アマゾンのアプリを使って日用品の買い物ができないことは序の口で、電子書籍や動画・音楽といったほとんどのエンターテイメントサービスを利用できなくなってしまった他、レストランのレビューサイトや仕事で使っているメッセージアプリなど、日常的に利用するほぼすべてのサービスを利用することができませんでした。これらのサービスの提供にはすべてAWSが利用されていたわけですが、彼女のデバイスが1週間の間にAWSのサーバーと通信しようとした回数は30万回にものぼり、これによって仕事もプライベートもまったく機能しなくなってしまったといいます。
彼女のチャレンジの中では触れられていませんでしたが、他にもAWSが利用されているところに目を向けると、企業が社内で利用する情報システムや大手の金融機関の決済機能など、数多くのシステムやアプリケーションでAWSが利用されています。そのため、もしも世界中で提供されているAWSがすべて停止してしまうようなことがあれば、世界経済が止まってしまうような事態になりかねません。こういったことを踏まえると、個人であっても企業であっても、いまや人類全体がアマゾンのAWS無しでは生活できない状況になっていると言っても過言ではない状況です。
世界では、AWSが登場した2006年から「クラウド」という言葉が使われるようになりました。日本でも2008~2010年頃を境に少しずつ「クラウド」という言葉が広まり、2014年には「クラウドコンピューティング」というフレーズが流行語に選ばれるなどクラウドの概念が広く浸透するようになっています。
日本におけるクラウドの広がりについては、一部の人が先行して利用を始めていた状態から2014年頃を境により多くの人がクラウドを利用し始める「普及期」のフェーズへと移行していきました(10)。AWSも2006年に誕生して以降2010年代に大きくシェアを伸ばしていますが、この「クラウドの時代」とも呼ぶべき2010年代の10年間に日本国内で起こったクラウドに関する象徴的なできごとをいくつかご紹介します。
2011年3月、AWSが日本で初となるデータセンターを開設して、日本におけるクラウド市場の口火を切りました。データセンターとは、サーバーやネットワーク機器などのIT機器を設置、運用する施設の総称です。
その後、マイクロソフトとIBMが2014年、グーグルが2016年、マイクロソフトに次ぐ世界第2位のソフトウェア企業であるオラクルが2019年に日本国内にデータセンターを開設していますが、これだけを見てもアマゾンが他社に先行してクラウド市場をリードしている様子を伺うことができます。
AWSがグローバル市場で大きな転機を迎えた出来事としては、2013年にアメリカの政府機関である中央情報局(CIA)がそれまでのIBMとの契約を打ち切って新たにAWSと契約を結んだことがあります。それまで、米航空宇宙局(NASA)などもAWSを利用していたのですが、政府機関、それもCIAの契約を受注したことでAWSへの信用は一気に増大し、多くの公的機関や企業がAWSを導入するきっかけになりました。
日本国内で見れば、2017年に国内最大のメガバンクである三菱UFJフィナンシャルグループが大手銀行の中で初めてAWSの導入に踏み切ったことでAWSの高い信頼性が証明され(11)、日本国内におけるAWS利用の潮目が大きく変わったきっかけとなっています。
翌年の2018年には日本政府が「クラウド・バイ・デフォルト原則」として、政府情報システムはクラウドサービスの利用を第一候補として検討を行う方針を発表しました(12)。この原則を受けて、2020年8月には経済産業省の情報システムのひとつがAWS基盤への切り替えを完了した他、2020年10月には総務省が構築した中央省庁向けの「第2期政府共通プラットフォーム」がAWS上で運用開始されています。
別の視点では、東京に次ぐ第2の国内データセンターとして利用企業の制限付きで大阪にデータセンターが開設されたのが2018年のことで、2021年3月にすべての企業が大阪のデータセンターを利用することができるようになりました。この大阪データセンターの利用解禁に伴っては、ソニー銀行がほぼすべてのシステムをAWSに移行する方針を発表していますが(13)、こうした状況を見るとこの10年弱の間にAWSの活用がどんどんと進んできたことが分かります。
近年日本国内でも急速に勢力を拡大しているAWSですが、2020年は過去最高のペースで売上を更新していてAWSの第1四半期の売上は過去7年間で約10倍になっています。
2020年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により多くの業種が甚大な影響を受ける中、コロナ禍の状況でAWSに対するニーズはかつてないほど高まりました。背景にあるのは、企業にとって無駄な支出を抑えるために必要な分だけITインフラを増強させたい、ないし無駄なリソースを最適化してコストをカットしたいという要求です。
また、多くの人が自宅で仕事をするようになったことで、かつてない規模でインターネットサービスが利用されるようになったことも大きな要因でした。2020年に大きな変化への対応を求められた業種のひとつは、インターネットに接続しながら音楽や映像を楽しむストリーミングサービスを提供するエンターテイメント業界です。AWSが開催したカンファレンスでは、2020年に入ってから世界中における1日当たりのストリーミング視聴時間は約40%増加し、アメリカではストリーミングビデオの通信量が前年の2倍に増えたというデータが紹介されていました(14)。
AWSはこうした急激なニーズの増大に対応可能なITインフラを提供しているだけでなく、映像制作に必要なテラバイト〜ペタバイト級にもなる大量のデータを転送・処理・保管するという形でも貢献しています。
さらに、2020年の1年間でAWSはエンターテイメント業界以外でも大きく活用の場を広げました。例として、日本国内ではテレワークのために必要な数千人規模の専用ネットワークをAWSを利用してわずか3日間で構築した事例などが存在しています。加えて、テレワークでも会社への電話問い合わせに対応するためのコンタクトセンターや社内のパソコンに遠隔でアクセスできる仮想デスクトップサービスなど、感染リスクを減らして業務を継続するためにAWSが大きく活用されました。
新型コロナウイルスの感染対策に直接的に関わる部分でも、ウイルスに関わるデータや研究記事を大学や病院から収集して、誰もが自由にアクセスしてデータを分析することができる環境がAWSによって提供されています(15)。