前書き
第1章 非エンジニアが1人でSaaSを開発するには
第2章 サービスのアイディアを見つけるには
第3章 アイディアへのフィードバックを得るには
後書き
本書は、エンジニアではない方が1人でSaaSを開発する方法を模索する本です。実際に実現できるかはやってみないとわからないのですが、現状存在するサービスや技術を活用して、どこまでを実現できるのかを模索するための本です。
本書を書こうと思ったのは、以下を達成して速いサイクルで顧客にSaaSを提供していきたいと考えたためです。
①SaaSを開発するまでにかかる時間を効率化するため
②SaaSを開発する頻度を上げるため
①について、開発に着手するまでに多大な時間がかかると開発にかける費用が大きくなり、回収するための高精度かつ高い金額の販売計画を開発前に立案する必要があるからだと考えました。精度の高い販売計画を立案するには、市場調査を行ったり最小限の成果物(MVP)を作成して検証を行う必要があり、それらの活動にも費用が必要なため、その稟議に時間がかかります。この問題の根本は開発にかかる費用が大きいために発生しており、効率化したいと考えました。一人で開発できるレベルまで効率化するのが目標です。
②について、ひとつのSaaSに対して企画や開発でリソースが多く取られるために、SaaSを開発する頻度を上げられないという問題が発生します。実は前述の①の課題は生産性の高い開発メンバーに開発を担ってもらうことで解決できますが、リソースが取られるという問題は解消が難しいです。また、開発を行えるメンバーは各社競って採用しており、すぐに人数を増やすことも難しい状況です。そこで、非エンジニアであっても開発できる手法を編み出して開発できる人数を増やして、SaaSを開発する頻度を上げられないかと考えました。
非エンジニアの1人SaaS開発は、①・②を達成するための手段です。以降でそれを模索していきます。
模索といいながらも私が大変参考にしている『たった1人でSaaSをグロースさせるデータ分析秘伝の書 究極の個人開発を極める本』のまえがきにおいて、SaaS事業を個人の力で作ることは比較的実現しやすくなっているとの記載があり、部分的には実現可能と考えています。ただ、非エンジニアが1人SaaS開発を実現するには障害も大きいと考えており、その障害のクリアが本書の目指すところです。
また、私が法人向けSaaSを担当しているため、本書でのSaaSは法人向けを想定します。
本書では、まずサービスのアイディアを探し、顧客からアイディアについてフィードバックをもらうところまでのニーズ発見を取り上げます。
本来はサービスを構築して販売・サポートするところまで一気通貫で書きたいと思っていました。ただ、私自身がWeb開発が未経験の状態で学習しつつ書いている状況ですので学習期間なども含めると技術書典12までに書けるのはニーズ発見までだと考えました。
本書を書き上げたら、次の本でサービスの構築や販売・サポートについても書いていきたいなと思っています。
・本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。従って、本書を用いた業務やサービス選定などは必ずご自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報による業務やサービス選定などの結果について、著者はいかなる責任も負いません。
・本書は、2022年10月時点での内容です。本書の中で登場するサービス・知識については、著者は一切の責任を負いません。
・会社名、商品名については、一般に各社の登録商標です。TM表記などについては記載しておりません。また、特定の会社、製品について不当に貶める意図はありません。
・本書の一部あるいは全部について、無断での複写・複製・アップロードはお断りします。
ここでは非エンジニアがSaaSを開発する方法として、どのような方法が取れるかを整理していきます。本書で取り上げるのはニーズ発見までですが、本書より後にどのようなことを書こうとしているかにも触れます。
非エンジニアが1人でSaaSを開発する方法としてまず思い浮かぶのは、ローコードやノーコードです。ただ、実際にノーコードのサービスを調べたり試してみたのですが、以下の課題があると感じました。
・機能が豊富なため最初に覚えることが多く、とっかかりが意外と難しい
・1ユーザーにつき月額数百円などのユーザー数課金のサービスが多く、プロダクトを作って販売することに向いていない
そのため、非エンジニアが1人でSaaSを開発する方法として、以下の流れを模索したいと考えています。
・自分が業務上困っている課題に着目してアイディアを明文化する
・サービスが完成した想定の提案資料を作成する
・Webデザインツールで画面案を作成する
・提案資料及び画面案による想定顧客へのインタビューでフィードバックを得る
・フロントエンド及びBaaS(Backend as a Service)、開発技法を学習サービスで短期間に集中して学ぶ
・コアの機能に絞ってサービスを開発する
この流れをご覧になって「結局プログラミングの学習が必要じゃないか」と思われた方がいらっしゃるはずです。それはその通りなのですが、1人で要望を受けて改善を行っていくには、最低限の自由度を確保するためにフロントエンドを開発できることが必要と考えました。バックエンドの部分は、BaaSを活用することで学習時間を最短化していることもポイントです。
本書ではフロントエンドやBaaSの学習を行う前の、想定顧客へのインタビューまでを取り上げます。
エンジニアの方が実際に、BtoB向けのSaaSを1人で開発している実例はあります。そのため、学習の流れが確立できれば、非エンジニアが1人でSaaSを開発することは可能です。ただし、1人で開発後の販売やサポートまで行うとなると、実現難易度が一気に上がります。
そもそも、BtoBのSaaSではまず販売主体が法人でなければ、SaaSを購入してもらえない可能性が高いです。そのため、ある程度SaaSの販売の目処が立った段階で法人を設立するか、会社員として自社の事業に貢献するためにSaaS開発を行うかのどちらかになると考えます。
本書より後の本でどのように1人で販売やサポートをするかも取り上げたいと考えており、現時点でのアイディアを書きます。
・販売ターゲットを大企業とすると各企業に対する営業が必要となるため、中小企業を対象とする
・集客はリスティング広告を中心に行う
・サービスのホームページはざっと見るだけで概要を把握できるようにわかりやすく作る
・無料トライアルを数ヶ月用意し、気に入った場合にはクレジットカードで購入できるようにする
・サポートはできるだけチャットボットで解決できるように、開発当初から仕様情報などをチャットボットにインプットしておく
販売やサポートについては、もっといい方法を模索します。
ここでは、サービスのアイディアを見つける方法について考えていきます。
初めてのプロダクト開発の場合には、アイディアを思いつきやすいように、自分自身の業務上で達成したいことを実現するようなプロダクトを考えます。これは初めてのプロダクトである場合に既存顧客へのインタビューが行えず、アイディアに対して十分なフィードバックが得られない可能性があることも考慮しています。
もしフィードバックが十分に得られなかったとしても、自分自身が達成したいことですので、自分自身でセルフフィードバックを行ってアイディアを練り上げることができます。また、同僚も同じような思いを抱えている場合は、同僚にインタビューを行うことができます。同僚であれば比較的、インタビューを行いやすいでしょう。
また、自分以外の課題を解決する場合のアイディアの検討方法については、『プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで』1を参照するといいです。
以下で、私自身が業務で達成したいことに着目したアイディアを考えます。
私はセキュリティーサービスのプロダクトマネージャーをしています。まえがきにも記載した通り、SaaSを開発するまでにかかる時間を効率化して、開発頻度を上げたいと考えています。
SaaSを開発するまでにかかる時間を効率化するには、開発にかかる費用を効率化して開発開始までのハードルを下げることが有効と考えます。ハードルとは、開発費用を回収して利益を上げるための精緻なビジネスプランを作成することなどです。
開発費用を効率化するには、最も費用として大きい人件費を効率化することが有効であり、理想をいえば1人で開発できることを目指したいところです。また、開発だけでなくニーズ発見や販売・サポートにも人件費が必要なため、それらも含めて1人で行う仕組みを作ることができればベストです。
SaaSの開発頻度を上げるためには、開発ができる人手を増やすことが有効ですが、エンジニアの採用は中々大変なのが現状です。そのため、現在エンジニアではないメンバーや新入社員がSaaSを開発できるようになれば、開発頻度を上げることが可能と考えます。
これらの目的を達成するには、非エンジニアが1人でSaaSを開発することができるようになることが有効です。また、私は自社だけでなく他社も含めてSaaSの開発スピードが上がることで、日本全体の生産性が上がることを目指したいと考えています。そのため、自社だけでなく他社も含めて使える仕組みを考えます。
達成したい目的が定まったことで、次に、どのように実現するかのアイディアの検討に入ります。