はじめに

 あなたがもし、ビル・ゲイツさんやトーマス・エジソンさん、本田宗一郎さんの技術者としてのこれまでの体験について興味が沸けば、 WEBで検索をすればすぐにその情報が手に入るでしょう。しかし、 そのような知名度のあるエンジニア以外にも世の中には果てしない努力をしてきたエンジニアが世の中にはたくさんいるはずです。またそのエンジニア一人一人に唯一無二の貴重な体験があるはずです。

 もしあなたがそのようなエンジニアこれまでの体験について知りたくなったとき、どのような手段を取ればそれらの情報が得られるでしょうか。私がその答えを考えたときに容易にその情報が得られる方法は出てきませんでした。

想像してみてください。

  もしあなたがこれからエンジニアとして社会に出ていく新人の立場だとして様々なキャリアを積んだエンジニアの一番の成功体験や一番の失敗体験などについて事前に聞いておくことができたら、その後の自分のキャリアに大きく活用できると思いませんか。

 もしあなたが成長途中の若手エンジニアだとしたら更なるスキルアップのため、今だからこそ先人から学びより今後の仕事を加速していきたいと思いませんか。

 もしあなたがベテランエンジニアであれば、ご自身のこれまでの経験と照らし合わせて、ご自身のされてきた努力、他のエンジニアのされてきた努力を互い間接的にでも労う、そんな時間を少しとってみたくありませんか。


私は検索をしてもなかなか出てこない”無名の”エンジニアの方の1番の成功体験・1番の失敗体験について、知りたい気持ちが強かったです。


そこで本書ではあらゆる技術職における、新人からベテランまでの成功体験・失敗体験について、ヒアリングを行い(エンジニアの方の了承を得た上で)有益な情報のまとまりとして皆さんに共有ができるものに仕立て上げました。


また、エンジニアの方々の体験や労力にはきちんとした対価を支払うべきで身銭を切ってヒアリングを行い、また単なるエンジニアさんへの報酬だけでなく、魂のこもった体験をぞんざいに扱うことにはならないように敬意を払う意味でも、デザイナーさんにもお仕事として発注させていただき装丁やデザインに関してご協力いただきました。


どうか少しでも皆さんのキャリアの一助になれば幸いです。


2021年10月01日

かさた

体験レポート 1~20

体験レポート 1


男性 会社員 流通業(卸売業)・SE 30年


Q1. どのようなお仕事をされていますか?


流通業界の企業内システムでシステム開発を行っています。昨年、システム全体をオンプレミス型からクラアウド型に移行しました。システム開発業務内容は、インターネット(プライベート)を通じたオンライン受発注システムの開発、保守を行っています。開発内容は、Linuxサーバー上で、Web系アプリケーション開発をJSP(JavaServerPage)で行います。業務アプリケーション開発にpowercobol、データベースシステムは、Symfowareを使い、プログラム開発を行っています。運用業務としては、日々の監視業務(夜間は当番制)を行い、システム異常時の復旧対応を行っています。又、業務スケジュールに合わせた自動運転処理のツール開発も行っています。


Q2. あなたのエンジニアのキャリアの中で最大の失敗をした経験と、その失敗によるその後の行動変化などについて教えてください


経歴が長いので、汎用機時代から現在のクラウド型システムに至るまで、数多くの失敗を経験しています。現在は、システムのハード費用が汎用機時代と比べると格段に安いので、開発環境、検証環境、本番環境と3つの環境を構築出来る為、安全な開発が出来るようになりました。汎用機時代は、費用面の制限により開発環境と本番環境が同居している状態でした。最大の失敗は、在庫管理システムの改修をシステムメンバーで行っている時、本番で動いている在庫をテスト用にコピーを取ろうとして、JCL(プログラムを動かすツール)の入力の定義と出力の定義を間違えて逆にして動かしてしまった事です。在庫が一括管理の為、社内の各倉庫の全商品の在庫数がゼロになってしまい、泣くに泣けない状態に陥りました。流通業で出庫が出来ないことは、致命的でした。さらに悪いことに前日、業務終了時のバックアップ(保存)をクリアーして、現在の状態をコピーする予定だった為、クリアー後に本番の在庫にリストア(戻し)してしまいました。たまたま、2日前の業務終了後の在庫のバックアップを別名でコピーを取っていた為、2日分のトランザクション(仕入、売上、返品などの出納)を使い、急遽、アプリケーションを作り復旧しました。ただ、復旧するまでその日の深夜まで掛りましたので、出庫業務が停止になりました。


 失敗の原因は、在庫のバックアップ、リストア処理を一人のメンバーに任せきりにしたことです。その後は、データベース(重要なファイル)のバックアップ、リストアの管理を手作業で行う時は、必ず複数で行うことを義務とし、申請、報告の書類管理の徹底を行いました。


Q3. あなたが『これだけはやっておいて本当に良かった』と思ったことを教えてください


システム関係の仕事に限らず、長く仕事をしていると、支持する側、される側になったりすることでしょう。支持する側もされる側も同じことが言えると思います。システム関係の仕事の範囲は、とても広いです。会社の規模にもよりますが、社内のシステム部門であれば、雑用的な仕事も引き受けることもあります。そんな時も、何でもやってみるのが大切だと思います。私自身、何でもやって見てから考えるようにして来ました。当然、自分の思うようには、なかなかなりません。失敗も数多くします。しかし、常に新しいことへの挑戦は忘れずにして来たと思っています。もう一つ、忘れては行けないことは、システム技術のスキルアップも必要ですが、業務に関することも、必ずスキルアップしてください。業務知識がないと、いずれやって行けなくなります。業務知識のスキルアップも心掛けながら、汎用機時代(日立、富士通、NEC)からクラウド型システムの構築迄、手掛けてきました。自分が率先して会社に提案するよりも、時代の流れに左右されることの方が多いと思いますが、何でもやってみると言う姿勢が良かったと思います。


 若い人たちには、一度や二度の失敗に挫ける事なく、新しい時代への挑戦を継続して、行って頂きたいと思います。




試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。