はじめに
第1章 カンファレンスに参加しよう
第2章 まずはカンファレンスに参加してみよう
第3章 カンファレンスに参加するための準備
第4章 カンファレンスでの学びを何倍にも深めちゃおう
第5章 聴講中のインプットとアウトプット
第6章 アウトプットしながらセッションを聴いたり雑談してみよう
第7章 ことばや線でもいいんです!描いてシェアして伝えてみよう!
第8章 交流の仕方
第9章 懇親会を全力で楽しもう
第10章 後日の楽しみ方
第11章 まとめブログ、ふりかえりブログを書こう
第12章 Twitter実況とカンファレンスー実況してる私のこだわり
第13章 登壇者として参加しよう
第14章 カンファレンススタッフになってみよう
第15章 カンファレンス主催者/運営インタビュー
あとがき
時は2021年1月某日
RSGTというカンファレンスに参加していた時にふと思いました。
「カンファレンスに参加するのって学びになるし、とても楽しいな」
しかし、カンファレンスに参加していて有益であると感じるのは、運営だけの力ではないと感じていました。
もしかして、参加者側の姿勢や関わり方によってカンファレンスから得られる物が大きく変わるのではないか?そして、それを知る方法はなかなか無いのではないか?
そう考えて、「カンファレンスを楽しむ方法」をさまざま集めたノウハウ本を作ることにしました。
この本を読むことで、カンファレンスから得られる物がより多くなります。
単純な知識のインプットだけではなく、職場での実践やコミュニティの形成へとつながるなど、カンファレンスとより実利のある関わり方ができるようになります。
著者は、カンファレンスに積極的に登壇している人、カンファレンスでTwitter実況をしている人、爆速で感想ブログを書く人などさまざまな角度からカンファレンスを楽しんでいる人をあつめました。
カンファレンスに参加する時に、「この本のノウハウをひとつ試してみよう!」「他の人のやり方をやってみよう!」
そんな風に、カンファレンスに参加しながら、カンファレンスをより充実した空間にできることを願っております。
2021年9月
企画 KANE@higuyume
・本書の内容は、情報提供のみを目的としております。著者一同、正確性には留意しておりますが、正確性を保証するものではありません。この本の記載内容に基づく一切の結果について、著者、編集者とも一切の責任を負いません。
・会社名、商品名については、一般に各社の登録商標です。TM表記等については記載しておりません。また、特定の会社、製品、案件、イベント等について、不当に貶める意図はありません。
・本書の一部あるいは全部について、無断での複写・複製はお断りします。
カンファレンスに参加するメリットはたくさんあります。人によって得られるものはさまざまですが、一般的にいえば、以下のようなメリットがあります。
・楽しい
・似た境遇の人たちとの出会い
・視野が広がる
・エネルギーをもらえる
・知識が増える
・共通言語ができる
単純に話を聞き新しい技術について学び、知識を深めることは楽しいことです。また、他の人、コミュニティとの繋がりができることも期待できます。コミュニティとしての聴講者とのつながり、登壇者、運営、関連コミュニティへの橋渡しなど、さまざまな関係を作るきっかけとなるでしょう。
さらに、感想をブログや実況の形でアウトプットすることで、自分の理解を深め、同時にアウトプットの練習にもなります。そして、そのアウトプットは、他のアウトプット(実況、ブログ、さらには登壇へ、あるいはスタッフとして、など)へ繋がり、あなたの人生を広げたり、変えたりする可能性があります。
単純に「楽しい」だけでも構いません。本書で、カンファレンス参加はこんなに楽しい、いいことあるんだったら参加してみようかしら、って思ってもらえると幸いです。
なお本書では、全体として「カンファレンス」と「勉強会」を明示的に使い分けることがあります。
共通する部分も多いのですが、規模や雰囲気によって差があることを説明するときなどに混乱しないよう、ここで一応の定義をしておきます。
基本的には、カンファレンスの方が大規模です。とはいえ大規模な勉強会もありますし、小規模なカンファレンスもありますので、参加者の人数だけでは区分できません。明確な区切りがあるわけではありません。また主催者が企業や実行委員のような組織だったものと考えることも難しいです。個人で開催しているカンファレンスもありますし、企業開催の勉強会もあります。
そこで、本書ではカンファレンスと勉強会を、トラック数や時間で区別しているとお考え下さい。
本書では、平日夜などに開催される比較的短時間のイベントを勉強会と呼びます。平日夜、19時スタート、2時間ほどのLTや講演があり懇親会がある、といったイメージです。
これに対し、カンファレンスは、朝から夕方までセッションがみっちりあるイメージです。あるいは午後だけという場合もありますが、それでもある程度の時間を想定してください。また並行して複数のトラックがあることも少なくありません。
開催日時は参加者の属性によって変わります。平日開催のものも、土日休日開催のものもありますが、平日日中に開催されるカンファレンスは、業務として参加する人の割合が高くなります。また、あくまで筆者の印象ですが、企業主催のカンファレンスは平日に、有志団体主催のものは土日開催が多い傾向にあるようです。
カンファレンスというと、何となく敷居が高く感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、一般の勉強会よりもハードルが低いところもあります。
・たくさんのセッションの中から選べる
たいていのカンファレンスでは、2トラック以上の並列セッションがあります。ということは、興味がある方を選ぶということができます。ちょっと聞いてみて興味と違っていれば移動するといったことも可能です。
・コミュニケーションを強要されない
懇親会への参加、あるいはスピーカーを囲んでの会話は勉強会・カンファレンスの醍醐味ではありますが、会話のネタがないなぁ、輪に入れるかしら、といったハードルを感じてしまう人もいるのではないでしょうか。たいていの場合は杞憂ですが、特に小規模な勉強会では、懇親会の時に知り合いが全くいなかったりすると、コミュニケーションを負荷に感じて疲れてしまうこともあります。
カンファレンスでは、人数が多い分、内輪ノリの心配がなかったり、みんなが初対面なので輪に入りやすかったり、輪から抜けたりも簡単だというメリットがあります。
カンファレンスに何があるかを、この章では記載していきます。
これまではオフラインカンファレンスが主流でしたが、昨今はCOVID-19の影響でオンラインのカンファレンスも増えてきています。そのため、オンラインカンファレンス・オフラインカンファレンスでそれぞれ何があるのかを整理して記載していきます。
もちろんここで挙げたものがどのカンファレンスにも必ずあるわけではないので、お目当てのコンテンツがあるかどうかはカンファレンスのホームページで内容を確認したり、カンファレンスの主催者やスタッフに確認をしてみましょう。
オンラインカンファレンス・オフラインカンファレンス共通で存在するものがいくつかあります。
・一般セッション
カンファレンスから選ばれた登壇者が、参加者に向けてスライドを用いながら発表する、いわゆる講演です。時間はカンファレンスによりますが、20分~45分程度行われることが多いです。
公募から選ばれたもの、プログラム委員が推薦したものなどがあります。いくつも併設で行われる場合がありますので、どれを聴くのかという楽しい悩みがあります。
・キーノート
一般セッションと同じく、登壇者が参加者に向けて行う講演です。ただし、イベントのオープニングとしての「基調講演」として一般セッションよりも長い時間が取られることも多く、時間は45分~90分が確保されていることが多いです。また、カンファレンス全体を通したメッセージが伝えられるような講演となっている場合も多く見受けられます。
非常に有名な人、あるいは海外からのゲストが講演することもあります。
・スポンサーブース
カンファレンスのスポンサー専用に用意されるブースです。スポンサーがコンテンツ(プレゼント企画、セッション、対談企画、ワークショップ……)を提供したり、スポンサーの紹介がされています。スポンサーがセッションを持つ場合、会社説明から入ることも少なくないですが、最前線での技術トークが聞ける機会でもあります。また会社説明ということは、会社の雰囲気や人材募集の話が出ることも。
スポンサーブースを回っていろいろな話を聞くだけでも楽しいものです。その中で新しいプロダクトや技術トピックスに出会うことができるかもしれません。今困っていることを、御社プロダクトで解決できるか、と簡単に相談してみる、といったこともできるでしょう
・コーチズクリニック
カンファレンスの登壇者や各業界のプロフェッショナルな方々が、コーチとして参加者のお悩み相談に乗ってくれる場です。仕事や自分のキャリア等に悩みがある方は、是非相談してみましょう!
・ワークショップ
何らかのテーマが用意され、そのテーマにしたがって参加者と主催者で作られる場です。ワークショップの種類は多種多様ですが、トレンドになっているプラクティスを実際に皆で体験して感想を言い合ったり、テーマに沿った成果物を参加者の皆で作っていく形式が多いです。
・廊下
登壇者や参加者で交流や雑談をする場です。どんな話題がいつ起こって誰が参加するのかは、交流が始まる時になってみないと分かりません。
オフラインカンファレンスでは、文字通り廊下、あるいはロビーで自然発生的に交流が生まれます。オンラインカンファレンスでは、交流スペースとしてDiscordのチャンネルやZoomのブレイクアウトルームが設定されていることがあります。また後述のイベントSlackの雑談チャンネルなどがそれにあたるでしょう。
・ジョブボード
新たな仕事にチャレンジしたいと考えている方や、クライアントを探している方々の名刺や自己紹介が貼られている場です。カンファレンス参加者の方々は向上心が高く、仕事に意欲的な方々も多いので、一緒に働きたいと思った方には是非声がけをしてみましょう。
・懇親会
オフラインの勉強会では、たいてい懇親会までセットです。カンファレンスでも懇親会が開催されることは少なくありません(必ずあるというわけではありませんが)。
開催時間にもよりますが、17時まではセッションがあり、そのあと懇親会というパターンが典型でしょう。
さて、昨今のオンラインカンファレンスではどうでしょう?残念ながら、オフラインイベントに比較してユーザー体験はよいとは言えません。さまざまな懇親会に利用可能なツールがありますが、どれも一長一短だったり、オフラインの懇親会ほど密度とユーザー体験の良い交流ができるかというと少々残念な感じとなってしまいます。懇親会の章で詳細に述べますが、若干他の人の話が聞きづらかったり、タイミングを計りづらくて会話がかち合う・お見合いすることが多くなりがちなど……。
・アーカイブ配信
従来のカンファレンスでオンライン配信があるところは稀でした。映像・音声を記録し、編集して配信することにはノウハウや労力が必要です。主催者の記録用などとして映像を残す場合もありましたが、基本的に外に出るものではありません。したがって、聴講するためには現地に行く必要があり、あとから再度見るといったことはできませんでした。これが現地参加へのインセンティブ・モチベーションとなっている側面もあります。
ところが昨今のカンファレンスでは、登壇者もリモートで登壇する、それをZoomやYouTube等で配信する形が増え、ほんの少しの手間でアーカイブ配信することができるようになりました。その結果、さまざまなカンファレンスでアーカイブ配信がされるようになっています。
全セッションを公開しているカンファレンス、登壇者の了承が取れている一部(全セッションの6割とか8割程度)を公開しているカンファレンス、参加者だけに限定公開しているカンファレンスなど、アーカイブ配信の思想や扱いはさまざまですが、たいてい公式ページなどに記載があります。カンファレンスのYouTubeチャンネルを作っているカンファレンスもあります。興味のあるカンファレンスの公式ページなどをチェックしてみてはいかがでしょう?
アーカイブ配信があることで、並列トラックをあとから見たり、再度見て学びを深めるなどが可能です。また、繰り返し見て、理解しづらかったことを繰り返し理解できるまで見るといった活用もできます。また、並行するセッションを片方をリアルタイムで、片方をアーカイブでみるなど、両方見ることもできますね。
・カンファレンス参加者のコミュニティ
Discord/Slackなどによるカンファレンス開始前から終了後まで続くコミュニティが準備されていることが増えました。
オンラインカンファレンスでは、参加者、関係者のコミュニケーションをDiscordやSlackといったチャットツールで取ることが多いですが、そのままコミュニティとして継続します。すなわち、このコミュニティは開始前から存在し、カンファレンス終了後も残り続けます。
そのため、開始前にカンファレンス参加者同士で親交を深めたり、カンファレンス終了後にセッションの内容や印象的だったことで盛り上がったり、カンファレンス後に起きた仕事での変化について語ることが可能です。
参加するのにしり込みする必要はありません。とりあえず入ってみましょう。発言するなどの義務はありませんから、見るだけでも十分楽しい空間になるでしょう。もちろん議論や雑談に積極的に入っていくのもよいですね。相談にのってもらったり、イベント情報のやり取りなどもありますね。
一部の(オフライン)カンファレンスでは昔からありましたが、聴講プラットフォームをそのまま使ったりという形で昨今特に活用されるようになりました。コミュニティとして盛り上がっているところに参加するだけでも得られるものはあります。
昨今の情勢からさまざまなカンファレンスがオンライン開催になり、オンラインのメリットはたくさんあります。しかし次の2点だけは残念ながらオフラインカンファレンスでなければ得られない体験となっており、今のところ残念ながらこれらのユーザ体験はオフライン開催イベントには勝てません。懇親会については、オフライン限定というわけではありませんが、ユーザー体験的にはオフラインの方が満足度が高いため、再度取り上げます。
・スポンサー展示
会場内にスポンサー各社が展示ブースを出し、製品紹介のパネル掲示、チラシ配布、ノベルティ配布などを行っています。これはオフラインカンファレンスにしかありません。パネル掲示などはともかく、チラシやノベルティ(ステッカーやボールペン、ロゴ入りグッズなど)、またブース担当者との直接会話といったユーザ体験はオフラインの方が優れていると言わざるを得ません。その場で使ってみるといったこともオフラインの方が簡単です。
・ランチセミナー
スポンサー各社によるランチセミナーがあるカンファレンスもあります。お昼の時間帯に、ランチ(サンドイッチやお弁当)を食べながら聞くスポンサーセッションです。
スポンサー各社の生の声を聞くとても良い機会です。会社の技術紹介などは生の声が聴けます。最前線でどういう使われ方をしているのかといった情報を得ることもできるかもしれません。また人材募集しているといった情報についても、どういったポジションなのかといった細かいところまで知る機会にもなります。会社としても、人材募集などの思惑があってやっているランチセミナーですから、少しでもマッチングの確率を上げるために情報を頑張って出していることでしょう。
なお、たいていほぼ満席ですが、それを見越して設計しているので、ランチにありつけないということは稀でしょう。
・懇親会
懇親会は、オンラインオフラインともにあります。むしろ、運営側の準備(料理や飲み物、会場の机を並べるなど)が不要なので、カジュアルに時間枠として設定される傾向もあります。
カンファレンスへの参加は、心理的にも、その他の要因にしても、ハードルの高さを感じることがあるかもしれません。しかし、それらのハードルは決して高いものではなく、かつ得られるものは大きいと考えています。学びや縁、コミュニティ、あるいは楽しい時間、という貴重なモノが得られる可能性は高いといえるでしょう。
オンラインカンファレンス、オフラインカンファレンスで勝手の違うところもありますが、得られるものは共通するでしょう。カンファレンス参加をきっかけにいいことがありますように!