目次

はじめに

この本について
Delphiとは

第1章 基本的な使い方

1.1 画面の説明
1.2 ファイル構成の説明
1.3 最低限の文法

第2章 簡単なプログラムを作ってみる

2.1 新規プロジェクトの作成
2.2 プログラムの作成
2.3 プログラムをAndroidで実行する

第3章 お絵かきソフトの作成

3.1 初期設定
3.2 軌跡を描く部分を作る
3.3 ペイント処理部の記述

第4章 お絵かきソフトの色と太さを選択できるようにする

4.1 色を選択できるようにする
4.2 線の太さを変更できるようにする
4.3 画面のクリア処理を追加する
4.4 セーブボタンを追加する

第5章 Delphiのインストールと設定

5.1 Delphiのインストール
5.2 自動保存の設定

第6章 Delphiの構文

6.1 変数
6.2 配列
6.3 列挙型
6.4 レコード型
6.5 演算子
6.6 条件制御
6.7 関数とプロシージャ

あとがき

著者紹介

はじめに

この本について

 「Delphiで作るAndroidスマホアプリ」は、Embarcadero Technologiesが提供する統合開発環境 Delphiを用いて簡単にスマートフォンアプリケーションを作成する方法を解説したものです。また、この本はスマートフォンとして、Androidのみを対象としています。また、Delphi Community Edition 10.3ではAndroid OS 10までの対応となっています。詳細はEmbarcadero Technologiesのページで確認してください。

 インストール方法は5章に記載がありますので、インストールがまだであれば先にそちらを読んでインストールを完了しておいてください。

 本書のサポートは、以下のメールアドレスで行います。

 qa65000@qa65000.com(65000は六万五千)

 また、正誤表はqa65000.comに記載します。

 画面のスクリーンショット等やサービスに関する情報は執筆時点のものですが、継続的にバージョンアップが行われていますので、差異が出る場合はご容赦ください。本書に記載されている会社名、製品名、各社の登録商標または、商標、商品名、会社名、製品名については、商標マーク、TM、著作権マークなどは表示していません。

Delphiとは

 Delphiとは、Embarcadero Technologies が提供している Delphi (Object Pascal) 言語を使ってWindows上でアプリケーションを開発するための統合開発環境です。Windows32/64ビットアプリケーション、MacOSアプリケーション、iOS32/64ビットアプリケーション、Android32/64ビットアプリケーション、Linuxアプリケーション(Enterprise, Architect Edtionのみ)を作成できます。

 コンポーネントと呼ばれる部品を使ってアプリケーションのUI(ユーザーインターフェース) を設計し、ボタンをクリックした時などに発生するイベントにコードを記述するスタイルでアプリケーションの開発を行います。

 コンポーネントがOSの差異を吸収しているので、開発者はOSの違いを意識することなくひとつのソースコードでアプリケーションを作成できるというのが大きな特徴です。

 Delphiのエディションとして、有料の Professional, Enterprise, Architect の他に無償版のDelphi Community Edition があります。※Community Edition の商用利用には制限があります。

図1: FireMonkeyイメージ図

 上記のイメージ図のように、ユーザーソースはひとつですべてのプラットフォームが動作することがわかると思います。

第1章 基本的な使い方

 この章では、Delphiを使う上で最低限知っておきたいことについて解説します。

1.1 画面の説明

 まずはDelphiを起動します。まだDelphiをインストールしていない方は、5章を読んでDelphiをコンピュータにインストールしてください。Delphiが開いたら、左上の「ファイル」メニューをクリックして、その中の「新規作成」にマウスをあわせてください。右にメニューが出てくるので、「マルチデバイスアプリケーション」をクリックします。新しいウィンドウが開くので、「空のプロジェクト」をクリックしてください。すると、以下のような画面が出てきます。この画面がDelphiの基本的な操作画面になります。

図1.1: IDE画面説明(コード選択時)
図1.2: IDE画面説明(デザイン選択時)

 各ウィンドウの役割は次のようになっています。

 ①構造:コンポーネント(フォームの上に貼り付ける部品)のツリー構造を表示する画面です。

 ②オブジェクトインスペクタ:コンポーネントの設定項目やイベントを設定する部分です。プロパティのタブとイベントのタブがあります。

 ③コード/デザイン(フォーム):コード部のページではプログラムを記述します。デザインのページでは、コンポーネントをドラッグアンドドロップでフォーム(灰色の部分)上に貼り付けて画面をデザインします。コード選択状態とデザイン選択状態は下にあるタブを切り替えることで変更できます。

 ④プロジェクト:プロジェクトファイルのビルド構成,ターゲットプラットフォーム、ソースファイルの構造を表示する画面です。

 ⑤パレット:フォーム画面のときにフォーム上に配置するコンポーネントを選択する画面です。

1.2 ファイル構成の説明

 Delphiで使われるファイルの拡張子について、簡単に表で説明します。

表1.1: 拡張子
拡張子名 説明
.dproj Delphi用プロジェクトファイルです。中身はXMLです。
.dpr Delphi用プロジェクトファイルです。中身はプロジェクトの管理をするソースコードです。
.pas Pascal のソースコードファイルです。ソースコードを記述するファイルです。
.fmx FireMonkey フォームのファイルです。

1.3 最低限の文法

 以降の説明は、知っておくと役に立つ最低限のDelphi文法です。詳しい説明は6章に載せていますので、さらに詳しく知りたい際は参考にしてください。

変数宣言

 変数は、文字や数字などの情報を保持するための入れ物です。Delphiでは、begin(C言語での"{"にあたる)の上にvarを書き、varとbeginの間で変数の宣言を行います。宣言の書式は変数名: 型名;です(ただし、version 10.3以降ではインラインでの変数宣言も可能です)。型は以下に示すもののほか、いくつかの種類があります。
例:

var
  x: Integer;  //Integer(整数)型のxを宣言
  y: Boolean;  //Boolean型のyを宣言
begin
  x :=3;       // xに3を代入
  y :=true;    // yにtrueを代入
    ...........

 数値だけでなく文字列型なども宣言できます。

 Delphiでは大文字、小文字の区別がありません。例えば、i(小文字)とI(大文字)は同じ変数となります.

 Delphiにはいろいろな型が存在しますが、以下に主に用いる型名の例を示します。

表1.2: 型の一覧
型名 型(サイズ) 
Byte 整数型(符号なし1バイト)
Integer 整数型(符号つき4バイト)
Single 実数型(4バイト)
Double 実数型(8バイト)
Boolean 論理型(1バイト)
String 文字列型

代入、演算

 代入は、変数に右辺側の値を入れる操作のことです。C言語などとは異なり、Delphiでは代入は ":="で書きます。また、演算子は+ - * / などが使えます。
例:

 i  := 5;
 i := i/2;
 i := i*2;
試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。