目次

はじめに
この本の内容・背景
本書の特徴
想定読者
免責事項
表記関係について
第1章 なぜ、自作の録画環境を作るのか
1.1 動画配信サービスがあるのに、なぜ?
1.2 メーカー製レコーダーではダメなのか?
1.3 過去の録画環境を⾒直したい
第2章 ハードウェアの準備
2.1 SBC:Orange Pi 5
2.2 SBC:Rock5 Model B
2.3 AC アダプター
2.4 ICカードリーダー
2.5 TVチューナー
2.6 その他
第3章 システム構成の概要
3.1 システム構成図について
3.2 作業のロードマップ
第4章 OSのセットアップ
4.1 OSの準備
4.2 OSイメージの書込み
4.3 OSの起動とフラッシュ更新
4.4 環境設定
第5章 Mirakurunをセットアップ
5.1 Mirakurunとは
5.2 チューナーデバイスのセットアップ
5.3 ICカードリーダーをセットアップ
5.4 Mirakurunコンテナをセットアップ
5.5 Mirakurunの起動と初期設定
5.6 チャンネルスキャンと再起動
第6章 搭載されているハードウェアアクセラレーターを使う
6.1 ハードウェアエンコードを使う理由
6.2 rkmppencのセットアップ
6.3 ハードウェアエンコードの性能
第7章 EPGStationのセットアップ
7.1 データベースサーバーのセットアップ
7.2 EPGStationのインストール
7.3 録画データ用のストレージを追加
7.4 EPGStationを起動する
7.5 動作チェック
第8章 録画システムの運用に向けて
8.1 状態監視ダッシュボード概要
8.2 状態監視ダッシュボードのセットアップ
8.3 ダッシュボードの設定
8.4 深夜のエンコード処理
8.5 ダッシュボードの活用
8.6 予期せぬ事態への対策
第9章 まとめ
付録A 付録
A.1 enqueue_enc.jsの内容
A.2 system_reboot.sh の内容
A.3 Raspberry Pi 4ではどこまで出来る?
A.4 参考文献
あとがき
謝辞

はじめに

 この本を開いているということは、テレビ録画をコンピューターで行うことに興味のある方でしょう。そして、シングルボードコンピューター(SBC)でそれを実行したいと考えているのではないでしょうか。シングルボードコンピューターといえば、Raspberry Piシリーズが有名です。ですが、本書では比較的新しいシングルボードコンピューターであるOrange Pi 5シリーズやRock5を用いて、テレビ録画のためのレコーダーを作っていきます。家庭用のレコーダーと違い、正常にシステムが動作中かをチェックするダッシュボードを備えた本格的なものを構成します。

この本の内容・背景

 本書籍は、イマドキのシングルボードコンピューターを活用して、テレビ録画システムを構築する手引きとなるものです。シングルボードコンピューターの代表格:Raspberry Piを採用しないのは、現在において古い世代になりつつあるためです1。筆者がイマドキと(勝手に考えて)推しているものが、Rockchip RK3588シリーズを搭載したSBCです。

 録画に関する話題を書籍にした動機について簡単に触れておきます。かつては、月刊の雑誌でテレビ録画に関する特集や解説記事などをよく見かけました。しかし最近では、ウェブ上のみに情報が記載されていることがほとんどです。もちろん、ウェブ上の情報を元にシステムの構築は可能ですが、一冊の書籍にまとまっている方が効率的であると筆者は考えています。

本書の特徴

最新の環境であること

 本書は2023年の技術書典イベントに合わせて作成したものを底本としています。そのため、2023年時点でのソフトウェアの構成、ハードウェアの入手性などを考慮して記載しています。とくに重要なTV放送を受信するチューナーデバイスについては、購入が可能なもので説明をしています。

簡単に構築できるということ

 本書で記述した内容は、比較的簡単な操作となるよう整えてあります。手間取る部分については、筆者が用意したスクリプトや設定ファイルなどを提供しているため、手順に従って作業するだけでシステムを完成させられるようにしています。

想定読者

 本書では以下の読者を想定して記載しています。

 ・録画環境を作るのが趣味な人

 ・メーカー製のレコーダーで不満を感じている人

 ・以前に作った録画環境をイマドキに更新したい人

 ・積みSBCがあるので活用法を探している人

 読み進めていくにあたり、以下のスキルが必要です。

 ・Windows環境での基本操作ができること

 ・SBCに対してコマンドラインで操作ができること(CUI操作ができること)

 ・Linux環境でテキストファイルの編集ができること

 この先の説明において、基本的にWindows環境で操作します。SBCの操作もWindowsからSSHクライアントを用いて接続し、リモートで行う想定をしています。ですが、SBCにディスプレイとキーボードを接続し、直接操作をしてもかまいません。

免責事項

 本書で紹介する内容は、執筆時点での各機材やソフトウェアを用いて得られた結果・情報の提供を目的としています。著作権物の複製やそのほう助を目的としてはおりません。実際に本書の内容を実行・適用・運用することで生じた結果に対して、それは実行・適用・運用した人自身の責任であり、著者および関係者はいかなる責任も負いません。すべてにおいて自己責任で行ってください。とくに作成したシステムや録画されたデータは各個人の範囲で利用するのみとし、他者が利用できるような公開や使用については禁じられています。

表記関係について

 本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。

1. 執筆時点では一般的にはRaspberry Pi 4、Raspberry Pi 5は発表直後というところです。

第1章 なぜ、自作の録画環境を作るのか

 なぜ自作の録画環境を作りたいと感じるのでしょうか。これについて少し考えてみましょう。読者のなかには、既に自身の答えをお持ちかもしれません。そのような場合には本章をスキップして次に進んでください。

1.1 動画配信サービスがあるのに、なぜ?

 近年はアニメやドラマ、多くのTV番組が、有料の動画配信サービスを通じていつでも視聴できるようになりました。そのため、「現在において、なぜ⾃分で録画環境を整える必要があるのか」と、疑問を持つ⽅もいらっしゃるでしょう。

 その答えとして、筆者は「真の意味での⾃由な視聴体験」を追及するためと考えています。確かに、配信サービスは⾮常に便利です。 その⼀⽅で、 配信内容は予期せず変わる可能性があり、特定の番組がアクセスできなくなることを⼼にとどめておくことが必要です。それに対して、⾃作の録画環境は壊れることがない限り、いつでも好きな時に番組を楽しめる環境を約束してくれます。

1.2 メーカー製レコーダーではダメなのか?

 多くのメーカーが、誰でも⼿軽にTV放送を録画できるレコーダーを市場に投⼊しています。では、なぜ⾃作の録画環境を選ぶのでしょうか?

 筆者が考えるその最⼤の理由は、⾃作ならではの「カスタマイズの⾃由度」と「耐障害性の向上」です。例えば、録画⽤のストレージの冗⻑化や、定期的なデータバックアップなど、好みやニーズに合わせてシステムをカスタマイズが可能です。さらに、汎⽤的な部品を使⽤しているため、故障した場合でも特定のパーツだけを交換し、⻑期間にわたって使⽤を続けることができます。

1.3 過去の録画環境を⾒直したい

 デスクトップPCで録画環境を構築している⽅は、そのシステムの更新を検討する時期に差し掛かりそうです。録画のためのチューナーデバイスとして有名なPT3の⽣産終了からおよそ8年が経過しています。現⾏のシステムが安定動作しているとはいえ、機器の寿命や技術の進歩、デバイスの⼊⼿性などを考慮すると、環境の更新は避けて通れない道です。時代の変化とともに、最新の構成や技術を知り、適切なタイミングでのアップデートを⼼がけることが⼤切です。壊れてから焦って準備をするということは避けたいものです。

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。