はじめに

2007 年に iPhone が登場注1 してから 10 年以上が経過しました。 2019 年の WWDC 注2 では、iOS, macOS, watchOS, tvOS と各 OS の最新版に加え、新たに iPad 専用の iPadOS が発表されました。

各 OS 向けのアプリは、Mac と Xcode があれば誰でも全世界に向けて公開できます。

本書では iOS 向けの Tips 集として、Xcode の説明から AppStore へのアプリ公開方法、その他アプリ開発に関するノウハウを紹介します。

1.1 対象とする読者

  • これからiOSアプリ作成を始めたい人
  • iOSアプリをストアに公開してみたい人 
  • 普段iOSアプリを作成している人

1.2 開発環境

  • macOS 10.14.6
  • Xcode 10.3 注3
  • Swift 5

1.3 免責事項

本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。

したがって、本書を用いた開発・製作・運用は、必ず自身の責任と判断によって行ってください。

これらの情報による開発・製作・運用の結果について、著者はいかなる責任も負いません。

1.4 サンプルコード

本書で紹介するソースコードは以下から入手できます。

 3 章 動画のリアルタイム合成

https://github.com/usayuki/AVCaptureSample

 4 章 JavaScript との相互通信

https://github.com/usayuki/IntercommunicationWithJavascriptSample

 7 章 iMessage ステッカーをリリースする

https://github.com/usayuki/iMessageStickerSample


注1 2007 年 6 月 29 日 (戻る

注2 Worldwide Developers Conference (戻る

注3 https://itunes.apple.com/jp/app/xcode/id497799835?mt=12戻る

目次

はじめに

1.1 対象とする読者
1.2 開発環境
1.3 免責事項
1.4 サンプルコード

第1章 Xcode の導入

1.1 Xcode とは
1.2 Xcode をインストールする
1.3 Xcode の基本操作
1.4 Xcode の画面構成
1.5 シミュレータを使う

第2章 App Store Connect でアプリを申請・公開する

2.1 証明書を作成する
2.2 AppID を作成する
2.3 Provisioning Profile を作成する
2.4 App Store Connect にアプリをアップロードする
2.5 App Store Connect でアプリの登録をする
2.6 アプリのステータス

第3章 動画のリアルタイム合成

3.1 動画撮影の準備をする
3.2 キャプチャ中の動画をプレビューする
3.3 動画を合成する
3.4 キャプチャデータを書き込む準備をする
3.5 キャプチャデータを書き込む

第 4 章 JavaScript との相互通信

4.1 WKWebView の準備をする
4.2 html と JavaScript ファイルを読み込む
4.3 JavaScript から Swift のメソッドを実行する
4.4 Swift から JavaScript のメソッドを実行する

第 5 章 プロジェクトテンプレート

5.1 テンプレートの場所
5.2 ディレクトリ構成
5.3 TemplateInfo.plist
5.4 Identifier の変更
5.5 ViewController の配置
5.6 ファイルの配置
5.7 Framework の追加
5.8 Build Settings の設定
5.9 Bridging-Header の追加

第 6 章 ファイルテンプレート

6.1 テンプレートの場所
6.2 ディレクトリ構成
6.3 テンプレートの配置
6.4 ___FILEBASENAME___.swift の編集
6.5 Text macros

第 7 章 iMessage ステッカーをリリースする

7.1 プロジェクトを作成する
7.2 ステッカー画像を追加する
7.3 アイコン画像を追加する
7.4 App Store Connect にアップロードする
7.5 AppID の作成
7.6 Provisioning Profile の作成
7.7 App Store Connect にアプリを登録する

おわりに

著者紹介

第1章Xcode の導入

1.1 Xcode とは

Xcode は Apple が無料で提供している IDE 注1、統合開発環境です。

2003 年にはじめてリリースされました。現在は、App Store からインストールしますが、その当時は MacOS X 注2 に含まれており、すべての Mac に Xcode が入っていました。

iPhone アプリ開発では、この Xcode でプロジェクトを作成します。Xcode ではコード編集以外にも、プロジェクトのビルドやデバッグ等を行うことができます。

1.2 Xcode をインストールする

Xcode は、Apple ID があれば App Store から無料でインストールできます。また、Apple Developer Program に登録していれば、次バージョンのベータ版をいち早くインストールして試すこともできます。

Xcode はサイズが大きいため、インストールには時間がかかります。

1.3 Xcode の基本操作

プロジェクトを作成する

Xcode を起動すると Welcome to Xcode の画面が表示されます。

新規でアプリを作成する場合は Create a new Xcode project を選択します。作成済みのアプリを編集する場合は右側から選択します。

Create a new Xcode project を選択すると、テンプレート選択画面が表示されます。Xcode にはあらかじめ複数のテンプレートが用意されており、初めてでもすぐに動作するアプリに触れることができます。

今回は画面が 1 つだけのシンプルな Single View App を選択し、Next をクリックします。次にプロジェクト作成画面で Product NameOrganization Identiier に適当な値を設定し Next をクリックします。最後にプロジェクトの作成場所を指定して Create をクリックすると新しいプロジェクトが作成されます。

1.4 Xcode の画面構成

Xcode の画面は、

  • ツールバー
  • ナビゲータエリア
  • エディタエリア
  • デバッグエリア
  • ユーティリティエリア

で構成されています。

ツールバー

上部にあるバーがツールバーです。 開発中のアプリをビルドして実行するときは▶、実行を中止するときは■をクリックします。また、その右にある端末名が表示されている部分からアプリを実行する環境(シミュレータ・実機)を切り替えることができます。

右のエリアから、ナビゲータエリア・デバッグエリア・ユーティリティエリアの表示・非表示を切り替えることができます。

ナビゲータエリア

左側にあるのがナビゲータエリアです。

こちらに Xcode プロジェクトに含まれるファイルが表示されます。ここで選択されたファイルがエディタエリアに表示され、編集を行うことができます。

エディタエリア

中央にあるのがエディタエリアです。

こちらでコードを編集したり、画面を作成したりできます。

コードを書き始めるとコード補完機能を利用できます。また、コードに問題があった場合は警告やエラーが表示されます。

デバッグエリア

下部にあるのがデバッグエリアです。

開発中のアプリを実行すると、こちらに様々なログが表示されます。アプリの実行中に問題があった場合はこちらに表示されるログをもとに対応します。

ユーティリティエリア

右側にあるのがユーティリティエリアです。

こちらでは Quick Help などが表示されます。また、Interface Builder ではアプリのインタフェースを設定できます。

Interface Builder

ナビゲータエリアで storyboard か xib ファイルを選択すると、エディタエリア内に表示されます。

こちらでは、ボタンやラベルといった UI パーツをドラッグアンドドロップするだけで簡単にアプリの画面を作成できます。また、各パーツに制約をつけることで簡単に複数の画面サイズに対応したレイアウトを作成できます。

さらに、配置したパーツとコードを関連付けることで、ボタンをタップしたとき等、特定のアクション時に処理を実行できます。

1.5 シミュレータを使う

Xcode には iPhone や iPad のシミュレータが付属しており、それぞれの機種でどのように表示されるのかを確認することができます。

また、同じ機種でも異なる OS バージョンでの確認も可能です。

シミュレータを起動する

シミュレータを起動するには、Xcode でアプリを作成して実行します。ビルドが成功するとシミュレータが起動しアプリが実行されます。

直接 Simulator.app 注3 を起動することもできます。

シミュレータは複数起動できるようになっており、異なる機種のシミュレータを並べて確認できます。どの機種のシミュレータで実行するかはツールバーから選択できます。

デバイス、OSを追加する

シミュレータの OS を追加するには、メニュー > Xcode > Preference > Components から追加したいバージョンを選択します。

インストールしたシミュレータを Xcode で実行できる機種として選択肢に追加するには、メニュー > Window > Devices and Simulators を開き、該当の機種の Show as run destination にチェックを入れます。逆に削除したい場合はチェックを外します。


注1 Integrated Development Environment (戻る

注2 現在の macOS (戻る

注3 /Applications/Xcode.app/Contents/Developer/Applications/Simulator.app (戻る

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。