目次

はじめに

第1章 今日が誕生日の人に送るメールを作る

第2章 写真のサムネイルをメールする

第3章 今日の予定をメールする

第4章 決まったアプリを起動する

第5章 選択した文字を翻訳する

第6章 スクリプトの実行

第7章 フォルダーをzip圧縮してメールで送る

第8章 フォルダーをパスワード付きのzipファイルに圧縮してメールで送る

第9章 マウス操作を繰り返す

第10章 Webページの画像をまとめてダウンロードする

第11章 Webページをまとめて開く

第12章 画像ファイルからPDFを作る

第13章 大きなPDFファイルからある文字列を含むページだけのPDFを作る

第14章 メールの本文を効率的に作る

あとがき

はじめに

 「Automatorで手軽に作るMac RPAレシピブック」を手に取っていただき、ありがとうございます。本書はMacの色々な操作をもっと効率化する方法があることを広く知ってほしい、という気持ちから生まれました。この本では、Macにはじめから用意されている、Automatorというツールを使うとこんなことができる、という事例をわかりやすく解説します。つまり、この本は、Macというコンピューターをもっと楽に使うためのガイドブックです。

 効率化のためとはいえ、あまり難しいことをやるのは本末転倒です。Automatorは、Apple Scriptというプログラミング言語を組み合わせることでできることが広がるのですが、本書ではあえてApple Scriptは使わず、Automatorと若干のシェルスクリプトで作れる事例を集めてみました。だからすぐに試すことができて、すぐに役に立つものばかりです。

 世間では、RPAという自動化・効率化が話題となっています。そのためのソフトウェアもたくさんあります。でも、Macならば、Automatorが標準で用意されているので、すぐにRPAを実践できるのです。

 本書で解説した事例をぜひ実践してみてください。その簡単さと便利さに驚くはずです。

 しかし、この、Automatorというツールは、結構「クセ」があります。用意されている部品をつなげて動かすことは簡単ですが、部品が用意されていないことをやろうとすると、どうやったらいいか検討がつかなくなります。また、そもそも用意されている部品をどう使えばいいのか、わかりにくいものもあります。

 この本では、筆者が実際に動かして動作を確認するのはもちろん、使うための考え方も説明しています。それは、読む方に自分で応用できるようにしてほしい、筆者が体験した苦労はしなくてすむようにしたい、という思いからです。

 この本を手にしてくださった読者の皆さんに少しでも役に立ちましたら、こんなにうれしいことはありません。さあ、Macを開いて、Automatorに仕事をさせてみてください。

免責事項

 本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって、本書を用いた開発、製作、運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報による開発、製作、運用の結果について、著者はいかなる責任も負いません。

第1章 今日が誕生日の人に送るメールを作る

 最初に、Automatorの基本的な使い方を説明しながら、実際に動作するサンプルを作っていきます。この章を読み終えるころには、Automatorはこういうふうに使うのだな、ということがわかっていただけるように解説します。この章で作るのは、「今日が誕生日の人に送るメールを作る」というプログラムです。機能としては、毎日決まった時刻に起動し、連絡先に登録されている、誕生日の人にお祝いメールを送信する、ということになります。

1.1 効能

 誕生日にメールを送りあう相手がいる場合、こちらから送るのを忘れなくてすみます。このプログラムのおかげで、周囲との人間関係が円滑になる(かも)。

1.2 作ってみよう

Automatorを起動する

 では早速作っていきましょう。まず、Automatorを起動しましょう。画面下のDockにある、Launchpadを起動します。ロケットのようなアイコンです。

図1.1: Launchpadを起動する

 そして、画面上部の入力欄に、「automator」と入力して、Automatorのアイコンを表示させます。見つかったらそのアイコンをクリックして、Automatorを起動します。

図1.2: Automatorを起動する

 しばらくすると、Automatorの初期画面が開きます。開かないときは、メニューの「ファイル」から「新規」を選んでください。すると図のような画面が開きます。

図1.3: Automatorの初期画面

時刻指定して自動起動するプログラムを作るために、「カレンダーアラーム」を選ぶ

 今回作成するのは、ある時刻になったら起動するプログラムです。そこで、「書類の種類を選択してください」という画面で、「カレンダーアラーム」を選び、「選択」ボタンを押します。

図1.4: 「カレンダーアラーム」を選択する

ここがポイント

時刻指定して自動起動するプログラムを作るときは、「カレンダーアラーム」を使う。

 画面が準備され、プログラムを作れるようになりました。

図1.5: Automatorの開発画面

連絡先から誕生日の人を検索する処理を追加する

 では早速作っていきましょう。まず、メールを送る相手を探します。つまり、今日が誕生日の人です。Macでは、人についての情報は、「連絡先」というアプリに格納されています。

 そのため、最初に追加する処理を選択するために、「ライブラリー」にある、「連絡先」を選択します。すると、右側の欄に選択肢が出てきます。そこから、「誕生日の人を検索」を選びます。そして、そのまま右のエリアにドラッグ&ドロップします。

図1.6: 誕生日の人を検索

 すると、右側のエリアに「誕生日の人を検索」が表示されます。これで処理が追加されます。

図1.7: 誕生日の人を検索の表示

 これで、連絡先から今日が誕生日の人を検索する処理を追加できました。びっくりするぐらい簡単ですね。

メール送信を選択

 次に、先ほど検索した、今日が誕生日の人にメールを出す処理を追加します。「ライブラリー」から「メール」を選択します。すると、メールに関連した部品が表示されます。その中から、「誕生日のグリーティングを送信」を選び、右側のエリアにドラッグ&ドロップします。

図1.8: 「誕生日のグリーティングを送信」追加

 初期状態でメールの本文に、「お誕生日おめでとう!」と記入されています。この文章を必要に応じて修正してもいいです。また、添付する画像もいくつか表示されています。ここも、お好きな画像を選べます。ランダムに選ばせることもできます。

 なんと、プログラムはこれで完成です。

動かしてみる

 試しに動かしてみましょう。

 ウインドウの右上にある、「実行」ボタンを押します。すると、今日が誕生日の人が「連絡先」に登録されていたら、メール送信画面が開きます。内容を確認して、「送信」ボタンを押すとメールが送られます。

図1.9: メール送信画面が開く

保存

 どうでしょうか。うまく動作しましたか。できあがったら保存します。メニューの「ファイル」から「保存」を選びます。すると、名前を入力するための枠が出てきます。好きな名前を付けます。ここでは、「今日が誕生日の人に送るメールを作る」としました。

図1.10: 保存画面

タイマー起動設定

 カレンダーアラームを保存すると、自動でカレンダーが開きます。

図1.11: カレンダー画面

 このカレンダーの画面に、今作成したプログラムが登録されています。これを編集して、毎日起動するようにすれば、忘れずに誕生日の人にメールを出せるようになります。

図1.12: 毎日起動するよう設定

 このように、カレンダーに設定しておけば、毎日決まった時刻に起動され、通知が表示されます。

図1.13: 起動したら通知がくる

 これで、誕生日の人にメールを出し忘れるということはなくなりますね。

 また、どうでしょう。Automatorでのプログラムの作り方もわかりましたでしょうか。部品がそろっている場合、とても簡単にプログラムが作れることがわかったと思います。

アメリカの文化の直訳

 今回、Automatorに用意されている、「誕生日のグリーティングを送信」という部品を使いました。これは便利なのですが、作られるメールは、「親愛なる○○、ではじまっていたり、件名が「○○からのあいさつ」となっていたり、ちょっとこのまま送信するのはどうかな、という印象を持つのではないかと思います。

 たぶん、英語の部品を直訳したからこうなったのでしょう。もう少しふみこんで、日本でよく使われる、誕生日おめでとうメールに近い文面だったらいいのにな、と感じました。

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。