近年、自然災害や異常気象、環境問題といったワードをよく目にします。これらの問題に対しては、発生前と発生後の変化をとらえることは非常に重要です。その変化を捉える方法の一つとして、地球観測衛星によるリモートセンシングがあげられます。地球観測衛星は定期的に地球を周回し、その地表面の様子を撮影するため、時系列による変化を捉えることができます。
地球観測衛星のデータを利用する場合、データを配布している機関から収集してくる必要がありました。そのため、複数の衛星を利用する場合、それぞれの機関ごとに作業が発生するため、手間がかかっていました。また、大量の衛星データを使用した解析を行う場合、ストレージやマシンスペックがネックになり、敷居が高いという問題がありました。
しかし、近年Google社からGoogle Earth Engineというサービスがリリースされたことで、衛星データ利用の敷居が低くなってきています。このGoogle Earth Engineを利用するとGoogleのクラウド上でデータの収集から解析までを行うことができるようになり、さらに複数の地球観測衛星の衛星データが利用できます。
本書はGoogle Earth Engineを用いた人工衛星の観測データの利用方法についてまとめました。最後までお読みいただくと、以下のことが出来るようになります。
・衛星データ解析を扱ったことがないが興味がある人
・地球環境の変動に興味がある人
・自分の研究に地球規模のマクロな視点を取り入れたい人
本書は以下の環境において正常に動作することを確認済みです。
・macOS Monterey(12.4)
・Windows 11(22H2)
・Python 3.10.11
・earthengine-api 0.1.350
本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。
Google Earth Engine(以下GEE)は、Googleのクラウドを利用して衛星画像データの入手や解析が可能なサービスで、研究や教育活動では無料で利用することができます。
これまでの人工衛星のデータ利用は、衛星を所有する各機関への利用登録、衛星画像データのダウンロード、専用のソフトウェアによる描画に解析と多くの作業が必要で、さらに一連の作業が衛星画像1枚ごとに発生していました。しかし、GEEの登場によりすべてGoogleのクラウド上で完結することができるようになりました。
それでは、GEEを利用するための第一歩として、まずは利用登録方法を紹介します。
こちらのGEEの公式サイトにアクセスし「Sign Up」をクリックします。クリックしたらGoogleアカウントのログインが求められるので、適当なアカウントでログインします。
https://earthengine.google.com/
次に利用者の名前・所属・所属機関の区分・居住国・利用用途を入力し、利用規則を確認後、「SUBMIT」をクリックします。
GEEは研究や教育活動では無料ですが、GEEを利用したアプリ販売などの商用利用は有償利用登録が必要となるので注意が必要です。
利用登録が完了したら、Googleから「Welcome to Google Earth Engine!」という件名のメールが届き、確認後利用できます。