目次

まえがき
第1章 Chromebookとは
1.1 Chromebookの特徴
1.2 Chromebookでできないこと
1.3 Chromebookの選び方
1.4 筆者おすすめChromebook
第2章 Chromebookを使う
2.1 Chromebookを使い始める
2.2 Chromebookを便利に使うコツ
2.3 Chromebookでゲームをする方法
第3章 Chromeブラウザーで開発する
3.1 Chromeブラウザーでプログラミングするためのツール・サービス
3.2 プログラミング以外のおすすめサービス
第4章 Linux開発環境を構築する
4.1 Linux開発環境を準備する
第5章 Webアプリケーションの開発環境を構築する
5.1 開発環境の構成
5.2 PythonでバックエンドAPIの開発環境構築
5.3 code-serverを使って、Chromeブラウザー上でプログラミング
5.4 TypeScriptでWebフロントエンドの開発環境構築
5.5 まとめ
第6章 技術同人誌を執筆する
6.1 Linux開発環境でVivliostyleを使う
6.2 GitHub ActionsでPDFをビルドする
6.3 表紙の作成
6.4 物理書籍の作成
6.5 まとめ
おわりに

まえがき

 みなさんは、プログラミングに使うパソコンは何を使っていますか。Windowsでしょうか。Macでしょうか。それともLinuxかもしれません。様々な選択肢があると思いますが、それらをどうやって選んでいますか。

 たとえば「iOSアプリを開発したいならMacを選ぶ」など、開発したいものの特性があるならば、それにあわせてパソコンを選択するのが第一です。ですが、Webアプリケーションを開発したい場合など、特定のパソコンの機能がないと開発できないようなものではない場合は、好みのパソコンを選んだとしても同じものを作れてしまうと思います。そんなときは、Chromebookを選択肢に入れてみるのはいかがでしょうか。

 本書はChromebookを使って、主にVisual Studio CodeやDockerを中心に利用することで快適にプログラミングする方法を紹介します。

 昨今Chromebookが様々な場面で普及してきましたが、Chromebookとして話題に上がるのは、価格が低い反面、スペックの控えめな端末が多いと感じています。そういった端末でも、ブラウザーでメールやSNSを利用するなど、簡単な用途には十分に使えます。ですが、それがChromebookのすべてだと思っている方もいるのではないでしょうか。本書を手に取った方はプログラミングをする方だと思いますが、Chromebookでプログラミングはしづらいのではないか、と考えている方もいるのではないでしょうか。Chromebookに「WindowsやMacを持っている人が、2台目、3台目のサブのPCとしては便利」「プログラマーが開発用のPCとしてChromebookを本格的に使うことは難しい」という印象を持っている方もいるのではないでしょうか。それらは大きな間違いです。Chromebookは、プログラマーが開発用のメインマシンとしても使いやすいです。

 本書は「プログラマーのための本気で使えるChromebook」と題しています。"本気で"というのは、メインとしてWindowsなどのPCを普段使いしながらサブのPCとしてChromebookを使うのではなく、Chromebookを開発用のメインマシンとして本気で使っていくことができる 、という意味で命名しています。Chromebookには、近年のアップデートでLinux開発環境の機能が追加されました。継続的なアップデートによりパフォーマンスが改善して快適になっており、特に昨今流行りのDockerを中心に開発する場合は、高い生産性で開発ができると感じます。本書では、これらの機能を使ってプログラミングをする方法を中心に紹介します。

 本書の前半では基礎知識として、Chromebookの紹介や機種の選び方、Chromebookを使うプログラマーにとって知っておいた方がいいサービスなどを紹介します。後半では実践編として、ChromebookでWebアプリケーションを開発する方法と、技術同人誌を執筆する方法を紹介します。

 ところで、本書には「Chromebookでしか使えない強力なツール」や「知られざる魔法のような機能」のようなことは書いてありません。本書を読んでも「知っていることばかりで、なにも特別な事はないではないか」と感じてしまうかもしれません。それは裏を返せば「Chromebookでも、普通のツールやサービスを使って普通に開発ができる」ということです。本書を読んで「普段やっているような開発がChromebookでもできそうだ」と感じてもらえたら幸いです。

 WindowsやMacで普段Dockerを活用して開発をしている方は、ぜひChromebookを手にとってその快適さを感じてほしいと思っています。本書がChromebookに興味を持つきっかけになったら幸いです。

本書の内容について

 本書は、2022年1月に開催された技術書典121で頒布された「プログラマーのための本気で使えるChromebook」を加筆修正し、最新の情報に更新したものです。

本書の対象読者について

 本書は、以下のような方を対象読者としています。


 ・普段WindowsまたはMacのPCを使っている

  ─Chromebookを日常的に使ったことはない

 ・普段からプログラミングをするためにPCを使っている


 Chromebookを既にプログラミングに使っているという方ではなく、まだ使ったことがない、これからChromebookを使ってみたいという方を対象にしています。筆者がWeb開発者のため、必然的にWeb開発周りの話題が多くなりますが、その他の方にも役に立つ話題があると思います。

 本書では、Chromebook自体の基本的な説明や操作方法については触れていません。普段WindowsやMacなどを使っていて基本的なPCの操作方法がわかれば、理解に特別の問題はないと思います。

動作確認環境について

 特に断りがない限り、本書に掲載しているWebサイトやソースコードは、下記の環境で動作を確認しています。


 ・ASUS Chromebook Flip C436FA

  ─CPU Core i7-10510U

  ─RAM 16GB

 ・Chrome OS バージョン 99

 ・Linux開発環境 Debian version 10.11


 また第6章を除く多くの箇所は、下記の環境でも動作を確認しています。


 ・HP Chromebook x2 11

  ─CPU: Qualcomm Snapdragon 7c

  ─RAM 8GB

 ・Chrome OS バージョン 100


 上記と近いスペックを持つChromebookであれば、本書の内容を再現できるのではないかと思います。しかし、特に2019年以前に発売されたChromebookや、Chrome OS Flexを導入した環境などについては、本書の対象外となっています。本書で紹介している機能の一部は利用できない可能性がある点をご了承ください。

表記関係について

 本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。

免責

 本書は情報の提供のみを目的としています。本書の内容を実行・適用・運用したことで何が起きようとも、著者や関係者ともに一切の責任を負いません。

1. https://techbookfest.org/event/tbf12

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。