目次

まえがき

本書で扱う内容
本書で扱わない内容
想定読者
正誤表とサポート
表記関係について
免責事項
底本について

第1章 radiberry pi!を作ろう

1.1 radiberry pi!とは何か
1.2 再生対象の定義
1.3 本手順書の読み方
1.4 構築パターン
1.5 環境構築に必要なもの

第2章 最小構築手順

2.1 手順説明
2.2 イメージ書き込み
2.3 raspi-configコマンド
2.4 ユーザ設定
2.5 ネットワーク設定
2.6 パッケージ更新処理
2.7 日本語入力環境
2.8 音声出力確認
2.9 その他の設定

第3章 モニタレス/ケーブルレス

3.1 手順説明
3.2 設定するインタフェースの選択
3.3 無線接続(CUI)
3.4 無線接続(GUI)
3.5 SSH接続
3.6 シリアル接続

第4章 ストリーミング再生

4.1 手順説明
4.2 radiko加盟局
4.3 ストリーミングURL
4.4 radikoタイムテーブル再生

第5章 ローカルファイル再生

5.1 手順説明
5.2 メディア準備
5.3 ドライブのマウント設定
5.4 ローカルファイル再生

第6章 FM波再生

6.1 手順説明
6.2 パッケージ準備
6.3 FM波再生

第7章 ブラウザー制御

7.1 手順説明
7.2 事前準備
7.3 ストリーミング再生画面
7.4 ローカルファイル再生画面
7.5 FM波再生画面

第8章 赤外線制御

8.1 手順説明
8.2 受光素子・抵抗・ブレッドボード取り付け
8.3 リモコン信号の記録準備
8.4 リモコン信号の記録
8.5 コマンド割り当て
8.6 サービス自動起動設定

第9章 Bluetooth出力

9.1 手順説明
9.2 Bluetoothスピーカー再生
9.3 自動接続設定

第10章 スケジュール実行

10.1 手順説明
10.2 パッケージ準備
10.3 スケジュール登録
10.4 スケジュール実行確認

付録A 地域別民放ラジオ局リスト

A.1 北海道・東北エリア
A.2 関東エリア
A.3 北陸・甲信越エリア
A.4 中部エリア
A.5 近畿エリア
A.6 中国・四国エリア
A.7 九州・沖縄エリア
A.8 全国エリア

付録B リモコン信号の記録(irrecord)失敗例

B.1 失敗例1:Running irrecord with this level of noise...
B.2 失敗例2:If you have a regular remote for e.g., a TV...
B.3 失敗例3:Please try again.(XX retries left)

付録C radiberry pi!パラメータシート

あとがき

著者紹介

まえがき

 もし「今、すぐにラジオをつけて下さい」と言われたら、あなたは何をしますか?何をしたらいいか全く分からないという人が、案外多いのかもしれません。

 '92年生まれの私の実感では、徐々にラジカセが使われなくなり、更に下の世代ではラジオを付けるといっても、そもそも「ラジオって?」となる人が居るのも無理はありません。

 物心付いた時からラジオに親しんできた身からすると、それはあまりに勿体無い。ラジオを聴く側にとって、聴取のための環境がこれほど整備された良い時代は無いのです。

 2010年代、ラジオというインフラは2000年代と比べ物にならないほど画期的な進化を遂げました。地上波と同じ内容を放送するradikoの登場により、ラジオがなくてもパソコンやスマートフォンがあれば聞けるようになったのです。

 本書は、多用途すぎる故に持て余しがちな小型PCのraspberry piを使い、radikoよりも快適にラジオを再生する環境の構築を目的として、その手順を解説した本です。つまり、ラジオを快適に聴くことを第一に考えた本と言っても過言ではありません。構築パターンの選び方次第では、ラジオとは関係なく音楽を再生する環境を構築することもできるのですが、是非とも本書を参考に、raspberry piでラジオをつけてみて下さい。

本書で扱う内容

 ・raspberry piのセットアップ手順

 ・radikoのストリーミング再生/タイムフリー再生

 ・raspberry pi内/外付けドライブ内に含まれるメディアファイルの再生

 ・ワンセグチューナーを用いたFM波の受信・音声再生

 ・ブラウザや赤外線リモコンによるコマンド実行

 ・Jenkinsによる定期スケジュール実行

本書で扱わない内容

 ・音声によるコマンド実行(スマートスピーカー化)

 ・podcastやラジオクラウド上の音声データ再生

 ・FM波以外(AM波・短波など)の電波受信/音声再生方法

 ・赤外線やBluetoothの規格・仕様

 ・DTMF音受信機能

 ・高音質で音声/音楽を再生する方法

想定読者

 次に該当する方が本書の想定読者です。

raspberry piを買ったものの持て余しているエンジニア

raspberry pi 3B/3B+を持っている方は特にお薦めです。サーバーPCとして使うための下準備が構築手順に含まれているため、進めるうちに何か別の使い道が浮かぶかもしれません。既に構築済みのraspberry piのイメージがある場合、差分の手順だけ実施すれば良いです。ただし、構築した時期が古い場合、手順や画面が異なる可能性がありますのでご了承下さい。

快適なラジオ聴取環境を作りたいラジオ好き

スマートフォンや赤外線リモコンでの操作が可能なため、選局や音量調整を最も快適に行える環境が完成します。

物好き

サーバーPCもラジオも、物好きとの相性が大変良いです1。どちらか片方に足を突っ込んでいる方は、是非本書でもう片方に足を突っ込んでみましょう。

ラジオ廃人予備軍

こちらの世界へようこそ。まずは自分専用のラジオ番組表を作るところから始めましょう。(「4.4 radikoタイムテーブル再生」参照)

正誤表とサポート

 本書のサポートや正誤表などは次のURLに掲載します。

 https://docs.google.com/document/d/1Th4SMkTwXUol6STI0b_l3W95HuAGs9Dshof--o4zsoI/edit?usp=sharing

正誤表QRコード

 正誤表・サポートの他に、使用イメージの動画や底本の同人誌版で記載したラジオコラム数篇を掲載しています。

表記関係について

 本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。

免責事項

 本書の内容は2018年9月時点のものを元に作成しています。本書の記載内容は筆者による調査や筆者の環境で実施した手順に基づいており、可能な限り正確に記載するよう努めていますが、正確性を保証するものではありません。また、本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって、本書を用いた開発、製作、運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報による開発、製作、運用の結果について、著者はいかなる責任も負いません。

底本について

 本書籍は、技術系同人誌即売会「技術書典4」で頒布されたものを底本としています。

1. 個人の見解です.

第1章 radiberry pi!を作ろう

 本章では、まずradiberry pi!とは何か、そしてradiberry pi!の構築手順を始める前に必要な準備について説明します。

1.1 radiberry pi!とは何か

  まず本書の主題である「radiberry pi!(ラジベリーパイ)」について説明します。


  radiberry pi!とは、ラジオを聴くためにカスタマイズを行ったraspberry piの環境を指します1。元々raspberry piはmicroSDカードとmicro B電源で動く小型PCで、主にサーバー用途として使われることが多いPCです。

  通常のPCと比べて大変安価2なため、気軽に手を出しやすいPCとしてエンジニアに広く認知されました。本書を読んでいる方の中には、買う際に「取り敢えず一つ買おう、何に使うかは後でいいや」と考えたエンジニアも居るはずです。

  そうやって「取り敢えず買ったraspberry pi」は、最後まで何に使うか思いつかず、気づいたらホコリを被ってしまうというケースが少なくありません。

  家で眠ったまま、もしくはこれから購入するraspberry piをラジオ再生機として使ってみませんか?というのが本書のねらいです3

1.1.1 想定している環境

  本書で示す構築手順は、次の表で示す環境を想定して記載しています。

項目 内容 備考
OS raspbian stretch with desktop CUIバージョンでも基本的には同じです
※解説の都合上、desktopバージョンとしています。
本体 raspberry pi 3B / 3B+ 3Bより古いモデルでも問題ありませんが、
古いモデルでの無線接続は本書では解説していません。

1.1.2 radiberry pi!の機能

  raspberry piに本書で紹介する構築手順により、次の機能が利用可能になります。


 ・操作

  ─Webブラウザ、赤外線リモコン経由での操作

 ・ラジオ/ストリーミング再生

  ─音量調整、再生制御

  ─radikoやストリーミング放送、ワイドFMの再生

  ─ランダム選局

 ・音楽再生

  ─音量調整、再生制御

  ─スキップ

  ─秒送り、秒戻し

 ・その他

  ─FM/ワンセグチューナーを使用したFM波再生

  ─Bluetoothスピーカーへの音声出力、ラジオ・音声ファイルのスケジュール再生

  ─raspberry pi固有のセキュリティ対策


 詳しくは「1.3 本手順書の読み方」で後述しますが、これらの機能の全てを利用する必要はなく、利用したい機能を選んで対応する構築手順だけを実施することが可能です。

1. radiberry pi!という単語は筆者の造語です。

2. 本体は5000円以下、電源やケースなどを合わせても約1万円あれば十分な環境を整えることが出来ます。

3. というのはあくまで仮の趣旨で、「もっと多くの人にラジオを聴いて欲しい」というのが本当のねらいです。

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。