目次

はじめに

本書の目的
本書の使い方
本書の対象読者
本書を読み進めるにあたって必要なもの
免責事項
表記関係について
底本について

第1章 FreeNASとは?

1.1 FreeNASの特徴
1.2 FreeNASの参考情報

第2章 FreeNASをインストールする

2.1 FreeNASの動作要件
2.2 VirtualBoxで仮想マシンを作成する
2.3 仮想マシンを作成する
2.4 FreeNASのインストールを行う
2.5 FreeNASを起動する
2.6 IPアドレスの設定を行う

第3章 FreeNASの初期設定を行う

3.1 初期設定のバックアップ
3.2 基本設定
3.3 NTP Servers
3.4 Advanced
3.5 Mail
3.6 ネットワーク設定

第4章 ファイルサーバーとして構成する

4.1 物理ディスクを追加する
4.2 ディスクプールを作成する
4.3 データセットを作成する
4.4 接続用ユーザーを作成する
4.5 データセットにユーザーを設定する
4.6 ファイル共有

第5章 FreeNASの基本運用

5.1 FreeNASをアップデートする
5.2 FreeNASをロールバックする
5.3 FreeNASが壊れた時に設定を戻す
5.4 WebGUIをHTTPSに対応させる
5.5 仮想マシンを構築する

終わりに

はじめに

 この度は、本書を手にとっていただき誠にありがとうございます。

 私は某クラウドサービスプロバイダーにて、エンジニア兼エバンジェリストをしております仲亀 拓馬と申します。ネット上では「かめねこ」と名乗っています。前職で急遽、新規でNASを構築する必要があり、そのときに偶然自宅で触り始めたFreeNASを選択。そのまま触っているうちに気づいたら本書が出来上がりました。

 本書は、世の中の多くの人々にFreeNASを知ってもらい、利用してもらうことを目的として執筆しました。現在は多くの会社が家庭向けNAS製品を出しています。それだけ、自宅にNASを置くことが一般的になりました(自宅クラウドという言葉が聞かれるようになったのも最近のことです)。

 そこで、改めて「自作NAS」というものを構築してみましょうというのが本書の目標です。皆さんは、自分でカスタマイズできるNASに興味はありませんか?余っているパソコンとハードディスクを追加し、家電量販店では高価なNASを、格安で構築してみたくはありませんか?さらには、NAS上で仮想マシンを構築して、自宅サーバーデビューもいかがでしょうか?これらを簡単に叶えられるのが、FreeNASです。

 本書を読むことで、皆さんは前提知識ゼロで自宅NASが構築できます。もちろん、業務用のNASとしても問題ありません。FreeNASは非常に高性能で、一般の家庭からデータセンターまで幅広く利用できます。私も前職では、データセンターのお客様向けNASとして構築・提供していました。

 本書では、1章から4章までにかけてFreeNASをゼロから構築する手順をご紹介します。もちろん、執筆時点(2019年7月)の最新情報です。そして、5章では構築後の運用時にあると便利ないくつかの手法をご紹介させていただきます。

 FreeNASを知らない方や知っていたけど使っていなかった方は、ぜひ本書をきっかけにFreeNASを構築してみてください。

本書の目的

 本書の目的はFreeNASを初めて触る方に向けて、インストールから設定までを行い、実際にNASを構築できるようにすることです。

本書の使い方

 本書は実際にFreeNASを0から構築してファイル共有を行うまでをご紹介していますが、各項目は次の構成になっています。

 1.設定項目の説明

 2.チュートリアルとして適用する設定内容

 3.その他コラムなど

 まず初めて利用される方は、2のチュートリアルとして設定する項目の説明とその内容を読んでいただき、それ以外は飛ばして構いません。

 そして、FreeNASでの構築の流れの雰囲気を得たところで、改めて各設定項目(1)の説明を確認するとより深く理解が進むでしょう。チュートリアルとして流れで学ぶことも、各項目の辞書として利用することもできる構成としています。

本書の対象読者

 ・FreeNASを初めて触る人

 ・FreeNASをすでに運用している人

 ・自宅NASの構築をしてみたい方

 ・会社用にNASを作ってみたい方

本書を読み進めるにあたって必要なもの

 本書では、実際に使用する環境ではなく、まずは雰囲気を掴んでいただきたいため、パソコン上の仮想化環境「Oracle VirtualBox」上に構築します。ですので、次のようなこれらを実行する環境が必要となります。とはいっても、通常のパソコンである程度スペックがあれば問題ありません。また、VirtualBoxではなく、実際に余っているパソコンや他のサーバーなどにインストールすることもできます。その場合は、ネットワーク構成などに相違がありますが、基本的にはそのままの内容で読み進めることができます。

 ・FreeNASを仮想的に構築するためのパソコン(Windowsなど)

 ・VirtualBox

対象バージョン

 本書は、「2019年07月」時点の情報を元に、次のバージョンを利用しています。

 ・FreeNAS : FreeNAS11.2-U5

 ・VirtualBox : 6.0.0 r127566(Qt5.11.1)

免責事項

 本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって、本書を用いた開発、製作、運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報による開発、製作、運用の結果について、著者はいかなる責任も負いません。

表記関係について

 本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。

底本について

 本書籍は、技術系同人誌即売会「技術書典5」で頒布されたものを底本としています。

第1章 FreeNASとは?

 FreeNASは、特別な知識がなくても自宅や会社に、簡単にNAS(Network Attached Storage)を構築することのできるオープンソースのOSです。FreeNASは非常に簡単かつ柔軟にNASを構築でき、一般家庭から大企業まで広く利用実績があります。また、ほぼ全ての作業をブラウザー上から行える「WebGUI」を備えており、コマンドを用いなくても運用が可能です。

 FreeNASは、FreeBSDを元に構成されており、執筆現在(2019年07月)の「FreeNAS11.2-U5」では「FreeBSD11.2 STABLE」をベースとしています。Linuxとは異なるため、CLI周りなどに若干の操作感の違いはあるものの、LinuxなどのUNIX系OSに普段から触れている方であれば、トラブルシューティングや一部カスタマイズが可能です。

1.1 FreeNASの特徴

 ・SMB/NFS/iSCSI/AFP/WebDavなどの多くのプロトコルに対応した強力なファイル共有機能

 ・ほぼすべての操作をブラウザーから簡単に行えるWebインタフェース

 ・ZFS採用による、データ整合性、ソフトウェアRAIDや重複排除、スナップショット機能

 ・一般的なメール・SNMPに加え、AWS SNSやSlackなどの多くの外部サービスへのアラート通知機能

 ・USBメモリーへインストール可能な軽量なブートイメージ

 ・ActiveDirectoryなどのディレクトリサービスを利用したユーザー管理機能連携

 ・プラグインを利用した、メディアストリーミングや自動バックアップなど、強力な拡張性

 ・FreeNAS上に仮想マシンを構築でき、シングルノードで簡単な仮想ホストサーバーとしての活用

1.2 FreeNASの参考情報

 FreeNASの多くのドキュメントはまだ日本語の整備が追いついていないものがほとんどです。

 本書はそういった状況で、まとまった日本語の情報を作るという目的のもと執筆しました。まずは本書をお読みいただき、本書に含まれない内容や新規の機能などについては次の公式サイトを確認ください。全て英語ですが、特別難しい英語というわけでもないため、機械翻訳にでもかけてゆっくりご確認ください。

 ・公式サイト

  ─http://freenas.org/

1.2.1 公式マニュアル

 次のページにアクセスすることで、自動的に最新のリリースのドキュメントへリダイレクトされます。

 ・https://www.ixsystems.com/documentation/freenas/

 また、本書で紹介している「FreeNAS11.2-U5」のドキュメントは次のURLにあります。

 ・https://www.ixsystems.com/documentation/freenas/11.2-U5/freenas.html

1.2.2 公式ブログ

 ・http://www.freenas.org/blog/

第2章 FreeNASをインストールする

 FreeNASは仮想サーバー、物理サーバー、パソコンなど多くのマシンにインストールできます。FreeBSDベースでカスタマイズされているため、後述するようないくつかの要件はありますが、基本的にはFreeBSDが動く比較的最近のハードウェアであれば動かすことが可能です。

 今回は、FreeNASのインストール方法をご紹介することを目的として、比較的簡単に利用できる仮想化ソフトウェア「Oracle VirtualBox」を利用します。本来であれば、専用のマシンを用意すべきですが、まずはFreeNASの魅力を知ってもらうことや、間違えたときに簡単にやり直せるように練習目的としてVirtualBoxを利用します。なお、何かしらの動作環境があればいいだけなので、例えば「VMware Player」や「Microsoft Hyper-V」などや、いきなり物理マシンへインストールしていただいても問題ありません。ただし、ネットワーク構成やCD-ROMのマウント設定などがソフトウェアなどによって異なるため、VirtualBox以外の場合は、ご自身の環境に合わせてご確認をお願いします。

2.1 FreeNASの動作要件

 はじめに、FreeNASの動作環境について確認しておきましょう。FreeNASの動作要件については、公式サイトやドキュメントに記載されています。

 ※バージョンによって要件は異なります。次の情報は執筆時点(2019年7月)時点のものです。併せて公式サイト1も確認しましょう。

表2.1: FreeNASの最小要件
Hardware Requirements
CPU マルチコア64Bitプロセッサ
メモリー 8GB以上
ブートディスク 8GB以上

 FreeNASのハードウェアで重要なのはメモリーです。メモリーの要件は最小が8GBですが、更に1TBあたり1GBのメモリーが推奨値となります。つまり、8TBのNASを作る場合は、8GB + 8GB で16GBのメモリーが推奨値です。もちろん、推奨値なので8GBでも十分動作しますが、ZFSの仕様上、メモリーが多ければ多いほどパフォーマンスが非常に高くなる傾向があります。そのため、実際に構築される場合は、予算が許す限り、多くのメモリーを搭載することをおすすめします。また、SSDをキャッシュにする方法もありますが、これはある程度メモリーを増設した上で、より高速化を行う場合に選択されます。そのため、まずはメモリーの増設を優先しましょう。

 Bootディスク用のサイズ最小要件として8GB、さらに16GBが推奨されています。FreeNASのフットプリントは非常に小さく、インストールイメージは執筆時点で最新の11.2-U5でも600MB程です。一般的なUSBメモリーやSDカードなどにインストールする方法もサポートされているため、そちらを利用したほうが無駄に物理ディスクやSATAコネクタなどを専有しなくて済むためおすすめです。また、通常はログなどもBootディスクに格納しますが、既存のログコレクタなどがあればぜひそちらを使用することをおすすめします。可能な限りBoot用ディスクにユニークな情報を持たせないことで、故障が起きてもすぐに復旧することができます。

 更に、FreeNASではブートディスクの冗長化が可能です。そのため、ブートディスクについては、8GB程度のUSBメモリーやSDカードを用意するだけで十分です。

 ただし、今回の目的は「FreeNASを体験すること」ですので、手軽に構築できるように最低要件よりも少し小さめに作ります。実際に本番環境に構築する場合は、前述の通り公式サイトの要件に従いましょう。

FreeNAS 9.2.19

 実は、FreeNASにはバージョン9.2.19というものがあり、こちらは32Bitハードウェアなどのレガシーな環境をサポートしていました。

 そのため、こちらも推奨ではありませんが、古いハードウェアであればバージョン9.2.19をインストールするのもひとつの手段です。ただし、ベースとなっているFreeBSD 9.2は2016年12月31日にサポートが終了しており、最新のパッチなどが適用されません。さらに、最新版で利用できる多くの機能が利用できないことや、WebGUIのレイアウトが大きく異なるなどの点に注意する必要があります。

 万が一、利用する場合は、これらの点を十分熟知した上で利用しましょう。

・FreeBSD サポートが終了したリリース

 ─https://www.freebsd.org/ja/security/unsupported.html

1. https://freenas.org

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。