まえがき / はじめに
第1章 サプリメント、ききたい
第2章 薬物中毒、色々ききたい
第3章 医薬品、医療機器、ききたい
第4章 新型コロナウイルス、ききたい
第5章 薬局、ききたい
第6章 性なる話、ききたい
あとがき / おわりに
本書「ビジネスパーソンのためのお薬・サプリ読本」を手に取っていただき、ありがとうございます。
今回のテーマは医薬品の周辺領域である、サプリメント、健康食品、大麻、医薬品流通といった内容を薬局薬剤師の目線から解説しています。窓口で質問を受けることや、ちょっとした科学の質問を受けることが薬局ではよくあります。医師の専門治療、流行りのサプリメントから、怪しげなサプリメントの解析まで、意外と薬局薬剤師のフォロー範囲は広いものです。
中でも、大麻や新型コロナウイルス、緊急避妊薬といったセンシティブな話題は、前回作成した同人誌の「ビジネスパーソンのためのセルフメディケーション読本」にはあえて載せなかったもの1です。これらの内容は薬物だけではなく、生命倫理や社会、文化、政治も関わる多元的なもので、薬局薬剤師も当事者として関わっている内容と感じております。医薬品供給から、適正使用、中毒治療といった公衆衛生をサポートすることで、いつものお薬やサプリを安全に使用できる環境が国内では整っています。
本書は一問一答式で、薬局で著者(薬剤師)に相談していただくような感覚で書かれています。ドラッグストアの薬から病院の薬、健康診断の結果といった内容は前作の同人誌に譲って、本書はもっとエッジを効かせ、かつ時流に沿った内容を取り上げています。
実際に薬局で相談を受けて回答した例も、質問内容から具体的な個人や相談を特定できない形に修正した上で、詳しく掘り下げています。ですので、薬局薬剤師に聞いたり、調査を依頼したものが書かれているという認識で読んでいただければと思います。いったい何の話をしている薬局なんだ……と思われるかもしれませんが、医薬品のこともしっかり解説していますのでご安心(?)くださいませ。
取り扱いに十分注意が必要な麻薬の項目では、薬剤師は管理する側の立場でもありますので、健康被害をなるべく少なくする方向性で話を進めています。そういう考え方もある、と受け取っていただけると助かります。いきなりセンシティブな項目を読むとかなり重いかもしれませんので、第一章や第三章から始めたほうがよいかもしれません。
商業出版に際して、新たに追補した第6章「性なる話、ききたい」は、緊急避妊に関する昨今の事情を解説しています。薬局薬剤師が緊急避妊薬の歴史的背景から現在の状況を書ける機会が商業出版で得られるとは思わず、インプレスR&D・山城敬氏の寛大な計らいに深く感謝しております。
本書は「次の世代に引き継ぐこと」を見据えて、10年後、20年後の次世代が苦労しないように、「今の私達ができること」の解像度を少しだけ上げられるよう、そのサポートすることを内なるテーマとして執筆されています。
本書は、薬やサプリ、医療機器が関わる領域で実際に薬局窓口で相談や質問を受けた内容をわかりやすく掘り下げた本です。具体的には、新型コロナウイルスのmRNAワクチンや大麻、トクホ(特定保健用食品)、緊急避妊薬などの成り立ちや経緯を踏まえた上で、実際どのように向き合っていけばよいかのヒントを得られるようにしています。
本書では次のような人を対象としています。
・薬やサプリメントについての実際を知りたい人
・そろそろ健康診断で再検査が増えてきたような気がする人(30代〜)
・前作「ビジネスパーソンのためのセルフメディケーション読本」を読んだ人
・今話題の医療(mRNAワクチン、医療用大麻、緊急避妊薬など)について理解を深めたい人
本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。
本書は川原夫妻と西岡俊文先生、水八寿裕先生に薬剤師としてレビューしていただきました。また、緊急避妊薬に関する人権的配慮について、薬剤師の高橋秀和先生には的確な助言をいただきました。また、同人誌版に引き続き、東西氏デザインのSDキャラクターを使用させていただきました。商業出版にあたり、お声がけいただいたインプレスの山城敬様、素敵な表紙イラストを書いていただいた16号氏には、技術的な支援や、リクエストを答えていただき、路頭に迷わずに出版まで導いていただきました。この場を借りて感謝いたします。ありがとうございました。
本章では、ドラッグストアなどで売っているサプリメントや健康食品、トクホ(特定保健用食品)に関わるお話を解説します。ドラッグストアから薬局、インターネットの情報の海に至るまで、サプリメントの広告や口コミが溢れています。いかにも怪しいサプリメントから、ストレス社会に戦えそうなサプリメントまで、実際にどんな成分が入っていて、どのような効果が期待できるのかを明らかにしていきます。
ビタミン剤はそこらかしこで売っていますが、実際に市販が解禁されるまでは医薬品扱いでした。1997年に発出された「ビタミンの取扱いについて」(平成9年3月31日薬務局長通知)により、13種類のビタミンが食品として販売できるようになりました。
日本でのビタミン剤の歴史は思ったよりも浅いのです。本来、ビタミン類に関しては、一般的な食事を摂っていれば不足することはないでしょう1。戦時中のような白米オンリーの食事など、極端な食事環境でなければ、現代社会ではビタミン不足で困ることはありません。
ビタミン剤の中でも、例外的に葉酸に関しては意義のある報告が出ています。妊娠前から妊娠初期(受精後28日後)までは0.45mg/日程度の葉酸を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害を予防することがあると報告2されています。医療用医薬品から葉酸を補給するには、濃度が高い(5mg/1錠)ため、すでに市販されている葉酸サプリメントを使いながら、通常どおりの食事を摂ることで十分に満たすことが可能です(つわりでつらい時期ではありますが……)。
最近の報告では、ビタミン大国アメリカのデータですが、ビタミン剤を使っても死亡リスクの減少に影響を与えず、ビタミンDに至っては、過剰に摂取することでかえってがん死亡リスクを上げてしまうと報告3されています。
この報告からすると、マルチビタミンを摂取しても死亡リスクにポジティブな影響を与えないと考えられます。ただし、なんだか調子がいいこともあるので、調子がいいのであれば、特に止めることもありません。食事とサプリメントのバランスを取りつつ摂取してもよいでしょう。