目次

まえがきという名の何か

第1章 何について書いているの?

1.1 どんな読者を想定しているか
1.2 コンタクトセンター
1.3 AWS
1.4 話を戻して

第2章 高速かもしれないスタートアップ

2.1 事前に必要なもの
2.2 Amazon Connectの始め方

第3章 盗聴?いえ、モニタリングです

3.1 モニタリングについて
3.2 モニタリング設定
3.3 通話をモニタリングしてみよう
3.4 録音された通話音声を聞いてみよう

第4章 CCP改造計画

4.1 CCPの改造について
4.2 改造版CCPを動かすための設定
4.3 改造版CCPを使ってみよう
4.4 ソースコードの解説

第5章 Real Time Streaming

5.1 Real Time Streamingについて
5.2 Real Time Streamingを動かすための設定
5.3 Real Time Streamingを使ってみよう
5.4 ソースコードの解説

第6章 おかたづけ

6.1 Amazon Connectのインスタンス
6.2 Kinesis Data Streamsのストリーム
6.3 Kinesis Video Streamsのストリーム
6.4 Lambdaの関数
6.5 S3のバケット
6.6 CloudWatch Logsのロググループ
6.7 IAMのユーザー
6.8 IAMのロール
6.9 IAMのポリシー

スペシャルサンクス

協力者
素材
参考

真っ白に燃え尽きて

まえがきという名の何か

 あなたがこのまえがきを読んでいるということは、自分はこの本を書き終えて、入稿を終えたのでしょう。このまえがきは本当に一番最初に書き始めたものであり、真っ白の原稿を前に精神がどうにかなりそうな状態です。自分にとって初めて経験する極限状態を前に、まえがきという文章は、いわば決意表明に近いものと化しています。何としても書き上げて入稿する、そのほのかな思いが自分を突き動かしています。

 思えば学生の頃から、何かしらの本を出版したいという気持ちがありました。ただその頃は、本を出版するまでの道筋も何もありません。せいぜい、同級生のWebサイトに小説を投稿していたくらいです。それでも、何かを執筆する楽しさは、そのときに掴んでいたのかもしれません。

 社会人になっても、「本を出版したい」という気持ちはずっと抱えていました。でもそれは、何かソフトウェアを開発したり、ブログですごい記事を投稿し続けたりした、その先に出版社からお声がかかるイメージでした。確かに、いくつかのサークルが技術書の同人誌を出しているのは知っていました。LaTeXに手を出して、組版の仕組みに触れたりもしました。ただそこに自分で本を出す姿が、どうにも想像できなかったのです。心の中にくすぶったものを抱え、日々の仕事に追われる毎日が続きました。

 転機を迎えたのは、技術書典6をtwitterで知ったときです。技術書だけのイベントが存在するというのは、単純に驚きでした。それまで技術系のイベントにはいくつか参加してきましたが、明らかに今までとは異なるタイプのイベントでした。そして、そこから技術系の同人イベントをチェックし、技術同人誌を買い、書いた人の話を聞いていきました。このサイクルを繰り返すうちに、「自分にも書けるんじゃないか」という気持ちを自覚したのです。

 しかし、書き方がわかっても、書く内容がなければ話になりません。そこで注目したのが、ちょうど仕事で扱っていたAmazon Connectです。Amazon Connectは2019年11月末にアップデートがあり、それについて、いくつか書けるネタを持っていました。本を書く動機が揃い、「書こう」と決意した瞬間です。

 というわけで、Amazon Connectの技術書がここにあります。少しでも読んでいただければ幸いです。

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 本書に関するお問い合わせ: mericle.post@gmail.com

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 本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって本書を用いたあらゆる作業は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報による作業の結果について、著者はいかなる責任も負いません。

第1章 何について書いているの?

 まずは、この本の内容について、大まかに解説させていただきます。

1.1 どんな読者を想定しているか

 基本的には、以下のような技術者の方を想定して、書かせていただきました。

 ・Amazon Connectでの通話音声の活用に興味のある方

 ・Amazon Connectに興味があるコンタクトセンター業界の方

 ・AWSについての知識があり、AWSで電話を使ってみたい方

 ですが、前提知識を持たない方も、読み進めることができるように配慮しました。そのため第1章については、基本的な用語の説明もさせていただいています。既にご存知の方は、どんどん読み飛ばしていただいて構いません。

1.2 コンタクトセンター

 この本で扱うAmazon Connect1は、「コンタクトセンター」と説明されます。なので、コンタクトセンターとは何か、少しだけ解説します。

 コンタクトセンターとは、世間的には「サポートセンター」のような名前で見聞きすることが多いです。サポートセンターという名前であれば、イメージできる方も多いでしょう。何か困ったときに電話をするアレです。なかなか繋がらずに、イライラした経験をした方も多いのではないでしょうか。

 実はこのコンタクトセンターって、構築にすごく時間とお金がかかるんです。いえ、正しくはかかっていたです。そこをAmazon Connectはうまく解決していて、業界から注目されているのです。

1.3 AWS

 Amazon ConnectはAWS2のサービスの中のひとつです。AWSとは何かについて、少しだけ解説します。

 AWSとは、ショッピングサイトとして有名なAmazon3が提供している、クラウドサービスです。これがもう一言では言い表せないくらい、たくさんの種類のサービスを提供しています。ファイルを保存しておくS34、レンタルサーバーのようなEC25、変わり種だと、機械学習を学べるレーシングシミュレーター6なんてのもあります。

 Amazon Connectは、この中のひとつというわけです。リリースノート7を見ると、開始されたのは2018年4月頃とかなり最近です。日本の電話番号が使えるようになったのは2018年12月頃と、ほんの少し前でしかありません。コンタクトセンター業界では、これからどんどん採用されていくのではないかと、予想されています。

1.4 話を戻して

 話をAmazon Connectに戻します。結局この本では、Amazon Connectの何について書いているのか?それは、通話した音声の活用法についてです。コンタクトセンターでは通話内容を録音しておき、それを活用することが当たり前になっています。当然Amazon Connectにも、通話を録音するための仕組みが、いくつか備わっています。しかも方法によっては、リアルタイムに通話の音声を取得することもできます。その仕組みについてまとめたのが、この本です。

 お手軽に通話音声を活用できるのであれば、本書を書く必要はなかったのですが、なかにはプログラミングが必要なものもあります。そこには、ちょっとしたノウハウのようなものがありまして、まとめておくべきではないかと考えたのです。

 本書では、リアルタイムに取得した音声の簡単な解析や録音をしているだけですが、どう応用するかは人それぞれ。面白いアイデアを思いついたら、ぜひ教えてください。

試し読みはここまでです。
この続きは、製品版でお楽しみください。