はじめに
オープンデータ公開リクエストやってみた
法制度改正と特許出願
裁判のIT化
強いIoT特許を取得するには?
ブロックチェーン技術の不動産登記への適用
あなたは自社製品に意図的に組み込まれた「脆弱性」情報をIPAに報告すべきか?
ソフトウェア開発・システム構築と個人情報保護法制の邂逅
技術発展と共に発展する法律
法律が追いついていないと思うときの考え方と対応─酒税を題材に
あとがき
執筆者紹介
技術の世界において、エンジニアがコンピューターを動作させるために組み上げるプログラムのことを「コード(Code)」と呼びます。
一方、法律の世界において、立法者が、国や組織の行動のルールとして作り上げる法令のことも「コード(Code)」と呼ばれます。
ふたつの「コード」は、技術者と法律家という全く異なる人たちにより、交わることなく、それぞれの進化を遂げてきました。
しかし、20世紀の科学技術の急激な進歩、特に参考のIT/ICT技術の進歩によって、技術が法律に、法律が技術に影響を与える時代が来ています。
また“LegalTech”など、法律自体がエンジニアリングの対象となる動きも勢いを増す一方です。人工知能や仮想通貨などの新技術を、どのようなルールで社会に馴染ませていくかといった宿題も山積みです。
そこで、わたしたちは、技術者と法律家が互いの「コード」を理解するための場として、ふたつのプラットフォームを作ることにしました。
ひとつは、技術者と法律家が、技術と法律が交錯するテーマについて、自由に論稿を投稿できる本書「技術と法律」です。
そして、もうひとつは、技術者と法律家が、それぞれ自身の分野の情報を他方に提供し、技術者と法律家の交流を図るLT会「Study Code」です。
昨年発行の「技術と法律」は予想外に好評を博し、底本である技術書典版を無事完売することが出来ました。
StudyCodeも初回開催から1年を経過しましたが、いずれも有志の執筆者や登壇者の方々の他、編集や会場提供や運営という形でこれらを支えてくれた方のおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。
1年ぶりの第2号が、今後のふたつの「コード」の更なる発展への一助となることを祈念し、ここに「技術と法律 2018」を刊行します。
平成31年2月吉日
「技術と法律」共同編集代表
足立昌聰
飯田 哲
「オープンデータ」という単語、響きとしては聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。地方自治体や政府などが保有する情報を、Creative Commonsなどオープンなライセンスのもとで公開し、利用目的の制限なく自由なデータの流通を図ることによって行政の透明性向上やサービス・業務の効率化、ビジネス活用など様々な効果を生み出そうとする試みのことです。
平成30年(2018年)時点では、オープンデータの流れをくんだ「官民データ活用推進基本法」が議員立法によって成立しており、内閣官房IT室および政府CIOが中心となって作成する「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」に沿ったオープンデータ公開の推進が行われています。そして国内約200の自治体が何らかのオープンデータを公開しています。
今年は地方自治体におけるオープンデータの公開と活用が推進される期間となっており、前述の計画では自治体のオープンデータ公開率を100%にする、という野心的な目標が掲げられています。
しかし、現状提供されているオープンデータはExcelやPDF、あるいは小規模なCSV形式のデータがほとんどで、実際に使ってみて役に立つのか? というものがかなりの数を占めることも事実です。
筆者の主な活動領域はOpenStreetMapとよばれる地図のオープンデータプロジェクトです。平成25年(2013年)頃から日本のオープンデータに主にライセンスや利用規約について趣味と実益を兼ねて調査をはじめたことをきっかけに参加し、いくつかの意見を述べたり文句を言ったりしてきました。そして、その活動を通じて自治体が自分の趣味と実益に沿ったデータセットを持っている可能性が非常に高いことを知りました。
私が注目したのは、「固定資産税の算出業務、あるいは土木管理課業務等で撮影している、自治体区域内の航空写真」というものです。今回、既に何らかのオープンデータを公開している全200の自治体の中から、オープンデータとして公開して欲しいデータのリクエストを受け付けている57の自治体のうち、53自治体に対して実際にリクエストを行ってみました。
本稿は、そのレポートの途中経過です。