はじめに
第1章 Visual Studio Code の導入
第2章 Javaアプリケーションの作成と実行
第3章 Java 開発の準備
第4章 Java 開発の実践
第5章 基本的な操作
付録A その他
あとがき
本書は、Java 開発を行う際に、Eclipse で利用してきた機能や操作を、Visual Studio Code でどうすればできるのかを解決する入門書です。
開発者にとって、今まで慣れ親しんだエディターや IDE という道具を変えることは、非常に抵抗があることです。操作や設定方法を覚えなおすだけではなく、今まで使っていた IDE では簡単にできるのに、新しい IDE ではどうすれば良いのか、というストレスを解消するのは容易ではありません。
筆者は、長年 Java 開発に Pleiades All in One Eclipse 1 を愛用してきました。しかし、昨今の開発では Java 以外の言語で開発する機会も増えてきており Visual Studio Code 2を選択するケースがあります。「IDE を切り替えるのが面倒だから一本化したい」という思いから、Java 開発に Visual Studio Code を利用してみることにしました。しかし、当然ながら、やりたい開発とは別に、IDE の操作や設定を調べるということにハマり、非常に多くの時間を浪費することになります。今後、同じ境遇にあう方々がいらっしゃると思いますので、そのナレッジをできるだけ共有し、無駄な時間を過ごさないようにできたらと考えています。また、IDE の選択肢として Visual Studio Code が Java 開発の実用レベルに到達しているか、本書を通して判断して頂く一助になれば幸いです。
・Eclipse で開発を行っている Java 開発者
・Visual Studio Code 初心者
・Pleiades All in One : Eclipse 2021(リリース 2021-06)
・Visual Studio Code : 1.59.0
本書では、Visual Studio Code の初期設定、および Java 開発環境の準備を行った後、実際の開発ユースケースに従って Eclipse と Visual Studio Code の設定や操作を説明していきます。Visual Studio Code 自体のインストールや基本的なことについては、本書の目的上、必要最低限しか説明しませんが、Visual Studio Code で初めて開発する場合は、順を追って読み進めることをお勧めします。既に Visual Studio Code を導入している場合は、辞書的な使い方も想定しております。読者の用途に合わせてお使いいただけたらと思います。
表記方法について、以下の通りとします。
・図のキャプションでは、"Visual Studio Code" を "VSCode" と表記する
・"Pleiades All in One Eclipse" を "Eclipse" として表記する
・複数の操作が存在する場合は、番号なしリストで表記する
・手順を示す場合は、番号付きリストで表記する
・本書の内容は、2021年8月現在のものを掲載しているため、記載された内容は予告なく変更される場合があります
・本書を用いた開発、製作、運用、およびその結果について、著者や関係者はいかなる責任も負いません
・本書に記載されているサンプルプログラムやスクリプト、および画面イメージなどは、特定の設定に基づいた環境にて再現される一例です
・本書の編集上の間違い、欠落について、著者や関係者はいかなる責任も負いません
本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の商標登録または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。
本章では、Visual Studio Codeをインストールし、最低限のJava開発環境を整えることを目的とします。また、Visual Studio Codeで覚えておくべき基本的な概念や操作方法について、あわせて説明をします。本書では、Windows 10の環境を前提としています。
Visual Studio Codeをインストールして、日本語化を行います。
WebブラウザーからVisual Studio Codeの公式ページ 1 にアクセスし、右上の "Download" ボタンを押下して、自分の環境に応じたインストーラーをダウンロードしてインストールします。インストール後、Visual Studio Codeを起動するとWelcome画面が起動します。
Visual Studio Codeをインストールすると環境変数のパスに "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin" が追加されます。コマンドプロンプト、ターミナル、ファイル名を指定して実行(Windowsキー + R) から "code" コマンドでVisual Studio Codeを起動することができます。
"Ctrl + Shift + P" または、上部のメニューから[View]→[Command Palette...]を選択し、"Configure Display Language" と入力します。"en" と "Install additional languages..." が表示されるので、"Install additional languages" を選択します。
"Japanese Language Pack for Visual Studio Code" を選択し〔Install〕ボタンを押下します。右下に通知ポップアップが表示されるので、〔Restart〕ボタンを押下します。再起動を促す通知が出てこない場合や、通知を誤って消した場合は、Visual Studio Codeを再起動すれば、日本語化が反映されます。
Visual Studio CodeでJava開発ができる環境を整えます。以下では、マニュアルで自環境への構築をしていますが、公式ドキュメントを見ながら導入してもいいかと思いますので、Visual Studio Codeのドキュメント "Java in Visual Studio Code" 2 も参照してみてください。
・コマンドプロンプトで "java -version" でJavaのバージョン情報が表示されること
・環境変数に "JAVA_HOME" が設定されていること
Pleiades All in One EclipseのFull Editionを利用している場合、複数バージョンのJDKが同梱されており、わざわざ自環境にJDKをインストールするという手間が省かれて重宝しておりましたが、Visual Studio Codeでは、自分でJDKをインストールする必要があります。
Visual Studio Code で Java を利用するためには、JDK 11以上をインストールする必要 3 があるので注意してください。JDKインストールについては、これ以上の説明はしませんが、以下のJDKをインストールしたとして話を進めます。
・AdoptOpenJDK → OpenJDK 11 (LTS) + HotSpot
・インストールパス(デフォルト): "%PROGRAMFILES%\AdoptOpenJDK\jdk-11.0.10.9-hotspot"
AdoptOpenJDK 4 をインストールした場合は、OSの環境変数であるPathの先頭にJDKをインストールしたディレクトリー+ binのパスが自動的に追加されます。コマンドプロンプトで以下が表示されることを確認します。
> java -version
openjdk version "11.0.10" 2021-01-19
OpenJDK Runtime Environment AdoptOpenJDK (build 11.0.10+9)
OpenJDK 64-Bit Server VM AdoptOpenJDK (build 11.0.10+9, mixed mode)
次に、環境変数 "JAVA_HOME" を設定します。Windowsの場合は、設定画面を表示する方法は様々ありますが、"Windowsキー + S" で表示される検索画面に "環境変数" と入力すると "システム環境変数の編集" という検索結果が表示されるので、すぐに[システムのプロパティ]画面を表示することができます。[システムのプロパティ]画面の右下にある〔環境変数〕ボタンを押下することで、環境変数の設定画面を表示することができます。ユーザー環境変数でもシステム環境変数でもいいので、"JAVA_HOME"という変数に、"%PROGRAMFILES%\AdoptOpenJDK\jdk-11.0.10.9-hotspot" の値を設定します。
コマンドプロンプトで以下が表示されることを確認します。コマンドプロンプトは、設定変更後に必ず立ち上げなおしてください。
> echo %JAVA_HOME%
C:\Program Files\AdoptOpenJDK\jdk-11.0.10.9-hotspot
複数バージョンのJDKを切り替えて利用したい場合や、Windows自体にJDKをインストールしたくない場合があります。インストーラー付きのJDKではなく、圧縮ファイル形式で提供されているJDKを利用します。圧縮ファイルを解凍し後、JAVA_HOMEとパスの設定をするだけで、Javaを利用することができます。Pleiades All in One Eclipseは、複数バージョンのJDKを同梱して配布されており、複数のJDKバージョンを一括して入手することができ、非常に便利です。
・Java Extension Packがインストールされていること
"Java Extension Pack" をインストールすることで、Java開発に必要な数種類の拡張機能が同時にインストールされます。ここでは詳細について割愛しますが、Java言語サポート、デバッガ、テスト実行、Maven実行、入力補助などの機能が追加されます。
Visual Studio Codeの左にあるアクティビティーバーから"拡張機能"を選択し、"Marketplaceで拡張機能を検索する" 部分に "java extension pack" と入力し、表示された "Java Extension Pack" を選択し〔Install〕ボタンを押下します。Visual Studio Codeの再起動は必要なくインストールされますが、設定項目が出てこない場合などは、一度、Visual Studio Codeを再起動してみてください。
インストールしたJDKで問題ない場合は、以降の説明は読み飛ばしても構いません。
JDKのバージョンに応じて、利用するJDKを変更したい場合、以下の手順で設定することができます。
〔歯車マーク〕ボタン →[設定]メニュー、または "Ctrl + ," から[設定]画面を表示します。[設定の検索]に "java.configuration.runtimes" と入力し[Java>Configuration:Runtimes]項目を表示します。"settings.json で編集" を押下すると、settings.json ファイルを編集する画面になるので、以下の通りsettings.jsonを編集します。設定したいJDKのバージョン毎にJDKのパスを入力していきます。name属性はsettings.jsonで指定できる値が決まっているため、自由に設定することはできません。
1: "java.configuration.runtimes": [
2: {
3: "name": "JavaSE-1.8",
4: "path": "C:\\path\\to\jdk-8",
5: },
6: {
7: "name": "JavaSE-11",
8: "path": "C:\\path\\to\jdk-11",
9: },
10: {
11: "name": "JavaSE-15",
12: "path": "C:\\path\\to\jdk-15",
13: "default": true
14: },
15: ]
Windows環境の場合、設定ファイルであるsettings.jsonは "%APPDATA%\Code\User" に格納されており、直接修正することも可能ですが、設定内容の補完が効くため、慣れるまでは、Visual Studio Codeの設定から編集することをお勧めします。
Java開発をしている場合に、設定したJDK情報を削除したにも関わらず、変更されない場合があります。"%APPDATA%\Code\User\workspaceStorage" に利用したJavaプロジェクトの情報が保持されているためです。配下の各ディレクトリー内のworkspace.json内で初期化したいフォルダー設定が入っているディレクトリーを見つけ、対象フォルダーを削除することでJDK情報をリセットできます。
本章では、前章で作成した環境で、簡単なJavaアプリケーションの作成と実行を通して、最低限ではありますが、基本的な操作方法を説明します。
作成するアプリケーションは、現在のシステムプロパティーを表示する簡単なアプリケーションとなります。
Mavenを利用して、Javaプロジェクトを作成していきます。
画面上に表示されている "Create Java Project" を押下するか、"Ctrl + Shift + P" → "create java project" と入力することで、Javaプロジェクトを作成するメニューが表示されますので、今回は以下の通り選択し、入力していきます。
1.選択 : Maven create from archetype
2.選択 : maven-archetype-quickstart
3.選択 : 1.4
4.入力 : groupId : "com.example" を入力
5.入力 : artifactId : "exam01" を入力
6.選択 : Mavenで生成した雛形プロジェクトを出力するディレクトリーを指定(本例では"D:\temp\vscode_java_exam" ディレクトリーを作成して指定)
7.Terminal画面が開き、Maven実行に必要なライブラリーの自動ダウンロード 1 が開始
8.入力 : version : リターン(入力なし)
9.入力 : "y" を入力
これで、Mavenが作成したJavaプロジェクトが、指定したディレクトリー配下に作成されます。プロジェクト作成完了と同時に、作成されたプロジェクトを開くための "通知ウィンドウ" が表示されるので〔Open〕を押下します。通知ウィンドウは、時間が経つと消えてしまいますが、下部の通知マーク(ベルの形)を押下することで、再表示することができます。また、「このフォルダー内のファイルの作成者を信用しますか?」というダイアログが表示されますが、自分で作成したフォルダーですので〔はい、作成者を信頼します〕を押下します。
[エクスプローラ]の[JAVA PROJECTS]から "App.java" を選択し、実行します。8行目, 9行目のmainメソッドの上部に表示される〔Run | Debug〕の〔Run〕ボタンを押下するか、"exam01" にマウスポインタを近づけると〔Run〕ボタンが表示されるので、押下します。雛形として生成されたプロジェクトが実行されて、ターミナル画面に "Hello World!" が表示されます。
ここまでで、雛形プロジェクトを作成し、実行するところまでできるようになりました。次は、アプリケーションに手を加えていきます。