はじめに
第1章 バックオフィススタッフに必要なリテラシー
第2章 どのExcelファイルを選ぶか
第3章 業務の把握、改善
第4章 ケーススタディ ~既に「Excel方眼紙」が存在するケース~
第5章 ケーススタディ ~建設業の入出金シミュレータ作成~
第6章 汎用的な機能のアドイン化
付録A APPENDIX1
付録B APPENDIX2 データセットの扱い方
付録C 参考文献
あとがき
近年、RPA・AIツールの流行により、バックオフィス業務の効率化が注目されています。しかし、用語が先行する一方で、未だ適切な自動化ツールの導入・運用がされているとは言い難い状況にあります。
著者は、Excelを利用した業務改善に携わって10年以上が経ちます。金融や流通を中心に、医療、教育など、様々な業界のバックオフィスでExcelアプリケーションの開発・運用に関わってきました。意外なことに、そこで役立ったのはExcelの知識以上に、問題解決の視点でした。
バックオフィスにおけるExcelツール活用には、属人的な制度運用や、ビジネスルールの変更を考慮しないシステム設計など、業務設計と密接に関わる課題が多かったのです。
RPA時代になっても、業務改善や、自動化ツールの設計開発に必要な基礎知識に変わりはありません。問題解決の考え方を身につけ、ゴールも手段も、自分で決めましょう。
本書は、問題解決とExcel開発のノウハウを適切に組み合わせて活用頂けるように、第1章ではRPA・自動化ツールの概念と業務効率化に必要なマネジメントの知識について、第2章からはExcelを活用した問題解決の方法を具体的に示しました。共同執筆者として、データサイエンティストの山川信之氏に加わっていただきました。コンサルタントとしての豊富な経験を活かし、体系化したノウハウを多数ご紹介頂いています。
本書が、バックオフィスにおける問題解決への意識喚起と、Excelを効果的に活用した業務改善を促進する一助となり、世の中により良いサービスが生み出されるきっかけとなることを願っています。
主な対象読者は、Excelを活用してバックオフィス業務の効率化を目指すビジネスマンの方です。Excelに留まらない、バックオフィスに必要な問題解決スキルも多数掲載しましたので、管理職の方や学生の方にもお読み頂ければと思います。
また、本書はExcelの知識が一切不要な章から、既にVBAの知識をお持ちの方に向けた章まで、部分によって実践に必要なExcelスキルが大きく異なります。索引や目次を参考に、ご自身に必要な箇所をご覧ください。
なお、関数・VBAの入門的な知識については、本書で問題意識を感じた時に、必要に応じて、インターネットや他の書籍で、学習を進めて頂ければと思います。
(花房なゆた)
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本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって、本書を用いた開発、製作、運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報による開発、製作、運用の結果について、著者はいかなる責任も負いません。
本書に記載されている会社名、製品名などは、一般に各社の登録商標または商標、商品名です。会社名、製品名については、本文中では©、®、™マークなどは表示していません。
本書籍は、技術系同人誌即売会「技術書典6」で頒布されたものを底本としています。
第1章では、今までITやマネジメントの観点を意識してこなかったバックオフィスのスタッフや管理職の方、またはこれから社会に出ようという学生の方に、問題解決、そして業務改善を「自分ごと」として捉えて頂くことを目標としています。
2章以降では、Excelを利用した問題解決について紹介します。本章では問題解決の手段のひとつとして、最近流行しているRPAについても解説を行います。
既存のExcelファイルを改善したい方は第2章へ、業務分析の具体的な方法を知りたい方は第3章へ。ケーススタディを通して、Excel開発の手法を学びたい方は第4~5章へ進んでください。第6章とAPPENDIX1・2には、よりスマートなExcel開発に役立つノウハウを掲載しました。ではまず、なぜバックオフィスにはITやマネジメントの知識が必要なのか。頻出用語を学びながら、理解を進めましょう。
この本のタイトルにもなっている「バックオフィス」とは何かご存知ですか?いわゆる事務職のイメージをお持ちの方が多いことと思いますが、バックオフィス業務の存在する部署は多岐に亘ります。自動車メーカーを例に考えてみましょう。最新の車を研究する開発部門、工場で車を組み立てる生産部門、お客様に車を売り込む営業部門は、会社の利益に直接関わる「直接部門」です。バックオフィス部門としてよく挙げられる総務・人事・経理を「間接部門」と呼ぶのは、直接部門の支援を行い、会社の利益に間接的に関わっているからです。
では、直接部門にはバックオフィス業務は存在しないのでしょうか。生産部門なら、どの車種を何台生産すれば効率よく利益が上がるかの生産管理、営業部門なら、お客様の情報を営業に活用するための顧客管理が必要です。生産管理・顧客管理などの管理業務は、一般的にバックオフィス業務に該当します。
そして、間接部門ならすべてバックオフィス業務というわけでもありません。サポート窓口は間接部門ですが、顧客と直接やりとりが発生する「フロントオフィス業務」1が中心です。しかし、顧客サポートを行うに当たり、Q&Aやクレーム情報を社内データベースで共有するのは「バックオフィス業務」です。
このように、直接、企業の利益には関わらず、かつ顧客と直接、接することがない業務全般を「バックオフィス業務」と呼びます。バックオフィス業務の改善は、企業活動におけるサービス向上や業務削減など、読者の皆さんそれぞれの課題解決に密接に繋がっているのです。