
オフィスの一角にある社内図書の本棚。作った当初はよく使われていたのに、気づけば「本が古いまま」「誰が借りているか分からない」「テレワークの社員は使えない」――そんな状態になっていないでしょうか。
こうした課題の多くは、社内図書を電子化することで解消できます。ただし、電子化の方法によっては著作権上の問題が生じることもあるため、進め方には注意が必要です。
この記事では、紙の社内図書館を運営している総務・人事・育成担当の方に向けて、電子化の3つの方法、紙との比較、実際の移行手順を整理します。
紙の社内図書館は「始めるのは簡単、続けるのが難しい」仕組みです。運用している企業からは、次のような声がよく聞かれます。

本は増え続けますが、オフィスのスペースは限られています。移転やフリーアドレス化を機に、本棚ごと縮小・撤去するケースも少なくありません。
貸出台帳やスプレッドシートで管理していても、記入漏れが積み重なると「どの本がどこにあるか」が分からなくなります。返却されないままの本や、退職者が持ち帰ったままの本も発生します。
紙の本は、本棚のあるオフィスに来られる人しか借りられません。在宅勤務の社員や地方拠点の社員にとっては、実質的に存在しない制度になりがちです。
誰がどの本を買うかが決まっていないと、新しい本が追加されなくなります。特にIT分野は情報の鮮度が大切なため、数年前の本ばかりでは使われなくなります。
貸出記録が不完全だと、どの本が人気なのか、制度に効果があるのかを説明できません。結果として、予算を確保しづらくなります。
社内図書の電子化には、主に3つの方法があります。ただし、手元の紙の本をスキャンして共有する方法は、著作権の面から現実的ではありません。社内で本を共有するなら、法人向け電子図書館が基本の選択肢になります。

会社が電子書籍の「法人向けライセンス」を購入し、社員がオンラインで借りて読む方法です。出版社が組織内での利用を認めたライセンスなので、複数の社員で共有しても問題ありません。
紙の社内図書館の「借りて読む」という使い方をそのまま再現でき、貸出・予約・返却も自動で管理されます。電子化の方法としては、最も紙の社内図書館に近い形です。
電子書籍ストアで本を購入し、社員一人ひとりに配る方法です。特定の本を研修で全員に読ませたい場合には向いています。
ただし、個人向けの電子書籍は購入したアカウントの本人が読むことを前提としたものです。1つのアカウントを複数の社員で使い回して「共有の本棚」にするのは、多くのストアの利用規約で認められていないため注意が必要です。
手元の紙の本を裁断・スキャンしてPDFにし、社内のファイルサーバーなどで共有する方法です。費用がかからないように見えますが、おすすめできません。
著作権法で認められている私的複製は、個人や家庭内で使うことが前提です。会社の業務のために本を複製し、社内で共有することはこの範囲に入らず、権利者の許諾なく行うと著作権侵害になるおそれがあります。スキャン代行業者を使う場合も同様です。
判断に迷う場合は、自社の法務部門や専門家に確認してください。
紙と電子の違いは「置き場所」「貸出管理」「使える場所」「利用状況の把握」に大きく表れます。一方、紙ならではの良さもあるため、両方を併用する企業もあります。
項目 | 紙の社内図書館 | 法人向け電子図書館 |
|---|---|---|
保管スペース | 本棚が必要。冊数に比例して増える | 不要 |
貸出・返却 | 台帳などで手作業。返却漏れが起きやすい | 自動で記録。期限が来ると自動返却 |
使える場所 | 本棚のあるオフィスのみ | スマホ・PCからどこでも |
同じ本を複数人で読む | 冊数分を購入 | ライセンス数分を購入 |
利用状況の把握 | 台帳の精度しだい | 貸出回数・閲覧時間などを確認できる |
本の価格 | 定価 | 法人向け価格(個人向けより高いのが一般的) |
品揃え | どの本でも購入できる | サービスの取扱ラインナップ内 |
読みやすさ | 書き込みやパラパラ読みがしやすい | 検索・メモ機能。好みは分かれる |
退職時の扱い | 回収が必要 | アカウント停止で閲覧不可に |
電子化で特に効果が大きいのは、テレワークや複数拠点で働く社員が多い会社、貸出管理に手が回っていない会社です。逆に、取り扱いの少ない専門書や、紙で読みたいという声の強い本は、紙のまま残す判断もあり得ます。
移行は「全部を一度に置き換える」より、「よく読まれる本から電子に移し、紙は段階的に整理する」方が失敗しにくくなります。

法人向け電子図書館は、サービスごとに取り扱う出版社やジャンルが異なります。ITや技術書に強いサービス、ビジネス書に強いサービスなど特徴があるため、自社で読ませたい本のリストを持って比較するのが確実です。
法人向け電子図書館には、主に「買い切り型」と「読み放題型」があります。買い切り型は月額基本料が安く、購入した本が会社の蔵書として残ります。読み放題型は選書の手間がない代わりに、1人あたりの月額費用が高くなる傾向があります。
また、法人向けの書籍価格は、組織内の複数人で利用できる権利を含むため、個人向けより高く設定されるのが一般的です。
電子化しても、本を選んで届ける人がいないと使われなくなるのは紙と同じです。新刊の追加、おすすめ本の紹介、読書会の題材にするなど、使ってもらうきっかけを定期的に作りましょう。
電子図書館では、貸出回数や予約待ちの状況が分かります。予約が多い本はライセンスを追加し、使われていない本は整理するなど、データを見ながら蔵書を見直していけます。
紙の本そのものを電子図書館に取り込むことはできません。電子図書館で読むには、同じ本の法人向けライセンスを新たに購入する必要があります。そのため、よく読まれる本から優先して揃えていくのが現実的です。
サービスによっては対応しています。たとえばBOOK TECH bizでは、書籍の電子図書館とは別に、自社のPDF資料を共有できる「グループ資料室」を使えます。
人数よりも、働く場所が分散しているかどうかが判断の目安になります。数名の会社でも、テレワークが中心なら紙の本棚より使いやすくなります。少人数向けの無料プランがあるサービスもあります。
全部を電子にする必要はありません。よく借りられる本や新しく追加する本は電子、手元に置いて読み込みたい本は紙、のように使い分ける企業もあります。
BOOK TECHの法人向け電子図書館「BOOK TECH biz」は、IT・ビジネス書を中心に3,000冊以上を扱う買い切り型のサービスです。最大2ヶ月の無料トライアルで、紙の社内図書館からの移行を試していただけます。トライアル後に自動で有料プランへ移行することはありません。
書籍購入補助の制度設計については、「社員の書籍購入補助、どう運用する?」(※公開後に記事5へのリンクを設定)でまとめています。